著者
笠原 義正 板垣 昭浩 久間木 國男 片桐 進
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-7_1, 1996-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
14
被引用文献数
2 5

毒茸のツキヨタケをマウスに投与したときの消化器系に与える影響を検討し, 塩蔵による毒抜き操作の有効性を調べた. その結果, 餌摂取量の減少, 体重の減少, 胃の膨満, 便重量の減少などの異常な状態はツキヨタケを塩蔵後塩抜きすることによって消失することが分った. また, 胃を膨満させる毒性物質として illudin S を単離した. 更に, この物質がツキヨタケの中毒症状の一つである嘔吐の原因物質であることもカエルを用いた動物実験により明らかにした.
著者
高橋 裕一 松浦 敬次郎 片桐 進
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.7-15, 1987
被引用文献数
7

山形県において, 4月下旬, 農業従事者の間に花粉症様疾患が多発しているとの情報があった.その原因を探索するために, 県内各地区の8集団, 農村住民5集団1878名(20-79歳)および学生3集団1866名(12-17歳)を対象にしてアンケート調査と臨床検査, 農村部および都市部における空中花粉量の定点調査と植生調査を行った.花粉症様症状, くしゃみ, 鼻汁過多, 鼻閉, 鼻のかゆみ, 眼のかゆみおよび結膜充血などを示す患者の出現頻度は, 農村住民で約10%, 学生集団で約5%であり, 患者の大部分は, 毎年4-5月に発症していることがわかった.発症時期の明らかな患者108名について皮膚反応試験を行った.4月-5月に皮膚反応が陽性の患者の大部分は, イネ科花粉, 特にスズメノカタビラ花粉に感受性を示すものが目立った.スギ花粉に対する感受性者は予想外に少なかった.空中花粉量の月別変動をみると, スギ花粉は3月末から4月中旬にかけて飛散し, 測定地点による空中花粉量の差は認められなかった.一方, イネ科花粉は4月-6月に飛散し, 測定地点により, または農作業の前後で飛散量に大きな違いが認められた.4月下旬から5月初旬に飛散する果樹花粉においても同様の傾向があった.調査対象地域の植生をみると, 患者が多発する4月下旬には, カモガヤ, ホソムギ, ナガハグサなどのイネ科植物はまだ開花しておらず, 果樹園および田起こし前の水田にはスズメノカタビラが著しく繁茂し, 開花中であった.また, スズメノカタビラとほぼ同じ時期に開花するスズメノテッポウは, 前者に比してその数は極めて少なく, 特に果樹園ではほとんど認められなかった.これらのことから, 4月-5月に当地方の農業従事者の間に存在する花粉症患者の多くはスズメノカタビラ花粉によると考えられる.
著者
高橋 裕一 井上 栄 阪口 雅弘 片桐 進
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.1612-1620, 1990
被引用文献数
7

我々は, Schumacherらにより開発されたfluorescence immunoblotting法を, 二次抗体に酸素標識抗体を用いることで肉眼または10×ルーペで花粉アレルゲンを判別できる方法に改良した.すなわち, Burkard捕集器の透明なテープ上に捕集した大気中の花粉アレルゲンをニトロセルロース膜に転写し, アレルゲンを抗Cry j Iウサギ血清または抗Lol p Iウサギ血清と反応させ, 次いでアルカリホスファターゼ標識F(ab')_2抗ウサギIgGで処理した.最後に, BCIP/NBT基質を加えることで青紫色のスポットを得た.この方法は, 従来用いられている形態観察による計数法のような熟練を必要としない.また, 共通抗原性を有する花粉全体を計数し得るため, ある花粉症患者の感作花粉アレルゲンの空中量を把握するにはすぐれた方法と考えられる.ただし, スギ花粉のように大量に飛散する花粉では, 試料捕集面積の0.16cm^2当たりに400個以上の花粉がみられた場合には, 花粉数が多く重なってしまい, スポット数として求めることができなかった.この場合には, 染色領域を1花粉の染色領域で除して算出する方式を試みた.しかし, 花粉症患者の原因物質量の把握という意味ではスポット数として計数するよりは, むしろデンシトメータを用い比色定量しアレルゲン濃度として表示する方式のほうが良いと思われる.