著者
大西 拓一郎
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.31-43, 2003-10-01

方言におけるコソ〜已然形型の係り結びの用法には,中央古典語と同様に条件表現・文末表現が認められる。このうち,文末の表現には,比較的ニュートラルな言い切り表現のほか,反語や安堵といった特定のモダリティに傾いた用法が認められる。また,条件表現的な文中の用法には用言の実質的意味が希薄なとりたて詞的用法が認められる。これらの発生・変化の過程を考える場合,係りのコソの対比性の変化と結びの用言の変化を考慮する必要がある。コソが対比性を希薄化することで結びの用法は対比的逆接条件表現から文末言い切り表現に変化した。一方,結びは,用言一般から補助動詞「ある」に限定される中で,「ある」が存在詞とは異なる実質的意味を持ち,ここにコソの対比性が関与することで反語用法を生み出し,対比性の希薄化が安堵用法を生み出した。さらに「ある」が文法性を強化することでコソ〜已然形は,全体としてとりたて助詞に回帰したりコピュラ化することになった。以上の変遷は分布でも裏付けられる。

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CiNii 論文 -  方言における「コソ〜已然形」係り結び http://t.co/Y4tOtOW9yQ

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