- 著者
 
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             郡 史郎
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 日本語学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 國語學 (ISSN:04913337)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.55, no.2, pp.16-31, 2004-04-01 
 
          
          
          
          - 被引用文献数
 
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             1
             
             
             
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        東京方言において, ソバヤ(そば屋)やサ<カナ>^^^-(魚)などの単語単独発話に現れる第1モーラから第2モーラへの上昇については, ア<ノソバ>^^^-ヤ, ウマ^^-イソバヤ__-, コ<ノアカイサカナ>^^^-, ニガ^^-シタサカナのように文中ではなくなるという観察から, 上昇はアクセントの特徴ではなく, 「句」の特徴であるという上野善道氏, 川上蓁氏らの考え方が現在有力である。本稿では話者10名の読み上げ資料の音響分析により, ニガシタサカナに類する「南禅寺のみやげ」の「みやげ」などには上昇作用が安定的に存在していることを示し, これは上昇が「みやげ」の韻律的特徴としてもともと備わっているためと考えるべきであること, すなわち上昇はアクセント単位が持つ特徴の一部, すなわち本稿で言う「アクセント」の一部であり, 「句」そのものの特徴ではないと考える方が音声的実態に即していることを示した。ただし, この上昇はアクセント(型)の区別には役立たず, 環境によっては顕在化しないと考えるべきである。その環境とは, 前文節から意味的な限定を受ける場合, しかも前文節が無核か, 核位置が文節末に近い場合, あるいは前文節以前にフォーカスがある場合である。