- 著者
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速水 格
- 出版者
- 日本古生物学会
- 雑誌
- 日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
- 巻号頁・発行日
- no.150, pp.476-490, 1988-06-30
- 被引用文献数
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3
三畳紀以降半深海の泥相に多いワタゾコツキヒガイ属(Propeamussium)は, ツキヒガイ属(Amusium)と見かけの上で内肋を共有するが, 系統的には全く異なり, 古生代後期に栄えたPernopectinidaeの特徴をとどめる「生きた化石」として注目される分類群である。PropeamussiumのほかPolynemamussium, CyclopectenがPropeamussiidaeの標徴を共有する。今回, 西太平洋地域の現生および化石イタヤガイ上科の数種について, 内肋の巨視的・微視的特徴を観察し, その機能的・分類学的意味を考察した。Amusiumを含むイタヤガイ科の内肋は, 腹縁近くの外層で外表の放射肋に応じて形成され, 本来は腹縁の噛み合わせを確実にする補助的役割を果たしている。これに対して, Propeamussiumの内肋は, 交差板構造の内層の中に繊維状構造を示すレンズ状のコアを伴って形成され, その末端部で付加成長する。このコアは発生的には, 右殻では稜柱層直下の"中層"から, 左殻では外層から分化したと考えられる。内肋の末端は両殻の間で対置し, 殻を閉じた時に互いに接するようにできている。おそらく, 遊泳のための強力な閉殻筋の緊縮が薄質の殻に与える破壊力を和らげるバットレスの役割を果たしていると考えることができる。