著者
箸本 健二
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.337-351, 2000-12-31
被引用文献数
2

本稿では, 主に情報通信技術の進展とその広汎な普及にともなう社会経済的な影響を, 主に産業空間の変容という視点から整理し, 今後の産業活動における変化の方向性を展望する.経済地理学では, 情報技術(IT)と産業の空間構造との関連をとらえた研究が1960年代後半から進められ, 対面接触の代替, 情報交換における時間距離の短縮効果, 通信コストの削減効果, そして通信回線を産業基盤として評価する研究が主に行われた.さらに, コンピュータのネットワーク化が進んだ1980年代以降は, 企業間提携の進行, 情報財産業の立地特性, テレワークやサテライトオフィスなど労働市場への影響などが新たな研究テーマとされる一方, 企業や都市構造など既存組織の再編成を情報通信技術と関連づけた研究も進んでいる.今日, 情報通信技術を産業モードの変化を加速させる因子として評価する視点が定着しているが, とりわけ重要な要素となるのがインターネット環境の浸透である.インターネット環境の浸透は, コミュニケーションコストの大幅な削減だけでなく, コミュニケーションそのものの急激な拡大をもたらしており, その社会経済的な影響力ははかり知れない.それゆえ経済地理学においても, 今日的な情報通信技術をブラックボックス化せず, 経済の各局面で果たしている役割と産業の空間構造との関係を冷静に検証し, そのモデル化を進める必要がある.

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