著者
井庭 崇 竹中 平蔵 武藤佳恭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.42, no.14, pp.73-89, 2001-12-15
被引用文献数
5

本論文では,マルチエージェントモデルによる人工市場アプローチによって,家庭用VTR における規格競争のモデル化と分析を行う.提案する人工市場モデルでは,マーケティング・サイエンスや消費者行動論などのモデルを用いてミクロレベルのモデル化を行うため,従来のマクロ集計的なネットワーク外部性モデルでは行うことができなかった分析が可能となる.シミュレーションの結果,局所的影響によって地域ごとに採用される方式が分離するという「地域性」の発生が観察され,それにより優位方式のマーケットシェアの拡大が抑制されることが分かった.また,現実のデータと照らし合わせることにより,消費者の方式選択における大域的影響度と局所的影響度のバランスを推計した.さらに,マーケットシェアの逆転現象の頻度とモデル設定との関係を調べることにより,序盤において局所的な影響を受けて確率的に方式選択する場合に逆転現象が生じうることが示された.最後に本論文の結果をふまえ,人工市場モデルの妥当性の検証に関する取り組むべき課題について考察する.In this paper, the format competition of video cassette recorders is analyzed by the artificial market approach with multi-agent model. The proposed artificial market model is made at microscopic level with models in marketing science and studies of consumer behavior, rather than aggregate macroscopic model of network externalities. As a result of the simulation, the emergence of "locality", which is caused by the local influence, is observed. In addition, the results show that the local clusters provide the brakes on the winner-take-all phenomenon. Then we estimate the balance of the global and local influences by comparing with the data in the real world. The frequency for the come-from-behind win and its settings are investigated. At the last part of the paper, the problem to work on about the model validation is discussed for the future study of artificial market simulation.

言及状況

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こんな論文どうですか? 人工市場アプローチによる家庭用VTRの規格競争シミュレーション(井庭 崇ほか),2001 https://t.co/nZXqQP11MZ 本論文では,マルチエージェントモデルによる人工市場アプローチによって,家庭用VTR に…
あとは,第2著者だけど竹中平蔵の論文とか http://t.co/uHXJfBDN 北野大の論文 http://t.co/5lRJQaXQ とかも,探せば簡単に見つかる.検索してタイトルが見つかるだけじゃなくて,本文まで簡単に読める訳で,ホントいい時代になったよなぁと思う.

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