著者
鷲見 朗子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.269-294, 2004-09-30

最後のスペイン・イスラーム王朝であるナスル朝が建造したアルハンブラ宮殿の壁面や噴水には、クルアーン句、カシーダ(アラブ古典詩)句、神と統治者を崇める定式文句が美しいアラビア書体で刻まれている。本論はアルハンブラ銘刻句の図像的機能に注目し、それが表象するイスラームの美と精神を探求することを目的としたものである。イスラームの聖なる象徴である銘刻句の分析から、宮殿内の大使の間は荘厳なイスラームの七つの天を象徴し、獅子の中庭はクルアーンにあらわれる天国を表象していることが導き出された。ナスル朝スルタンはアルハンブラ宮殿を通してイスラームの信仰に基づく理想的な国家と政体を実現しようとしたのである。すなわち、銘刻句は建築物に意味と解釈を与えており、ナスル朝ムスリムの尊い宗教心と神への真摯な態度が建築芸術として表現されたものといえる。

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鷲見朗子「イスラームの美と心 アルハンブラ宮殿のアラビア銘刻句を通して」http://t.co/OdjNCkuslZ*布目潮渢先生の中国茶研究に、「支配者の悪を明らかにするのに役に立たない」という旨の批判があったとかなかったとか聞くのだが、(続

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