- 著者
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大塚 和夫
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.2, pp.617-642, 2004-09
今日、世俗化論に対しては、理論面・実証研究面の双方において、さまざまな批判的検討がなされている。だがそれらの議論のうち、イスラームの事例を含むものは少ない。本稿はエジプトなどのアラブ・スンナ派世界の事例を中心に、イスラーム研究の立場から世俗化論を再検討することを目的とする。本論は、大きく二つの章に分けられる。前半は世俗化の前提となる「世俗的なるもの」という用語に含まれる複数の要素を分解し、それぞれの側面に応じてイスラーム世界の世俗化の実態を議論してみたい。その際に、一九七〇年代以降顕著になる「イスラーム復興」との絡まりあいが慎重に検討されよう。一方、後半部では、アラブ世界出身の学者(エルメッシリーとアサド)の世俗化論を紹介する。それらは、イスラーム世界の歴史的経験を充分に考慮した、近代化と世俗化の錯綜した関連をめぐる議論である。そして、イスラーム世界の事例も包含した「包括的世俗化」論の可能性を指摘する。