- 著者
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浅川 澄彦
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.1, pp.1-5, 1955-01-25
ヤチダモのタネは, かわつた発芽のシカタをするが, この性質は, わが国にあるほかのトネリコ属の種にはないことがわかつた。1.タネのなかの肉眼でみられる形態によつて, この属の種は2つの群にわけられる。(I)胚は十分成長していて, 形態も完全である。…頂生花序節のわが国のすべての種, 側生花序節のシオジ・ペンシルバニヤシオジ・アメリカシオジ。(II)胚は十分成長していないし, 形態もやや不完全である。…側生花序節のヤチダモ・オウシウヤチダモ。2.さらにIの群の種は, タネの生理的な性質によつてつぎのようにわけられる。(a)胚は休眠していない。(α)果皮をとらなくても発芽する。…アラゲアオダモ。(β)果皮があると発芽しにくい。…トネリコ・シオジ。(γ)種皮・胚乳が発芽をおくらせている。…ペンシルバニヤシオジ。(b)胚は休眠している。…アメリカシオジ。IIの群の胚も休眠しているが, そんなにふかくない。これらの観察結果と外国の文献などから, II型のタネのかわつた形態と, ヤチダモのタネにみられるようなかわつた発芽のシカタとは, Bumelioides亜節の特性とおもわれ, またシオジはMelioides亜節の種とおもわれる。