著者
浅川 澄彦 猪熊 友康
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.331-335, 1961-10-25
被引用文献数
1

クロマツとアカエゾマツのタネについて, 発芽における光感性をしらべた。いずれのタネも, 赤色光の短時間(30分)照射によつていちじるしく発芽が促進される。このような光の效果は, 0.2%の硝酸カリによつて部分的におきかえられる。クロマツのタネの発芽は, くりかえし照射したほうがよく促進される。いずれのタネの場合にも, 赤色光による效果は赤外光照射によつてうちけされるが, その程度は, タネをまきつけてから赤色光をあてるまでの時間, および赤色光をあててから赤外光をあてるまでの時間によつてことなる。クロマツ・アカエゾマツのタネを冷処理すると, 発芽するのに光を必要としなくなることがしられているが, 冷処理されたタネには赤外光照射による阻害があらわれないから, 光化学反応を中心とした光感経路にかわりうるようなほかの経路が, 冷処理のあいだにすすんだものとかんがえることができる。クロマツとアカエゾマツのタネは, 冷処理をうけると光にたいしてちがった反応をしめすようになるが, そのうちでもっともいちじるしいものは, アカエゾマツの冷処理されたタネの場合で, 赤外光によってかえって発芽が促進されるようになる。
著者
猪熊 友康 浅川 澄彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.166-168, 1961-05-25
被引用文献数
1

温度条件と光条件をくみあわせて, クロエゾマツとアカエゾマツのタネの発芽特性をしらべた。すでにしられていたように, これらのタネの発芽反応は, 温度条件によつていちじるしく影響されないが, クロエゾマツのほうがややひくい温度で発芽する。無処理のアカエゾマツのタネのおよそ半分は, 発芽するのに光を必要とするが, その性質は冷処理によって次第によわめられる。一方クロエゾマツのタネは, 暗黒条件でも光をあてた場合とほとんどおなじように発芽する。
著者
浅川 澄彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.125-129, 1956-04-25

クミアワセ層積法によつて チヨウセンマツのタネの発芽をいちじるしく促進することができたが, このキキメの1つはタネの吸水力をおおきくすることであるようにおもわれた。おなじ五葉松の2,3の種のタネについて, 発芽遅延が種皮の性質と関係があることが報告されていたので, この点をたしかめるために チヨウセンマツのタネの吸水経過をしらべた。このタネの吸水経過は クロマツやアカマツなどとおなじように3段階にわけられる。すなわち(1)発芽床においてから2,3日間の急にオモサがふえる時期, (2)ゆつくりふえるか またはほとんどかわらない時期, および(3)ふたたび急にふえる時期である。たいていのタネは(2)の段階にかなりながいあいだとどまつているが, 適当な前処理をおこなえば(3)の段階にはやくうつることができる。(3)でのオモサの増加は(1)での増加にほとんどひとしい。外種皮をとりのぞくと, たいていのタネはおよそ2週間で発芽しおわるが, 内種皮ものぞけばもつとはやく発芽させることができる。種皮をのぞいたときすぐ発芽するタネの胚は 休眠していないとおもわれ, こういうタネが(2)から(3)にうつれない原因は おもに外種皮にあるものとおもわれる。
著者
浅川 澄彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-5, 1955-01-25

ヤチダモのタネは, かわつた発芽のシカタをするが, この性質は, わが国にあるほかのトネリコ属の種にはないことがわかつた。1.タネのなかの肉眼でみられる形態によつて, この属の種は2つの群にわけられる。(I)胚は十分成長していて, 形態も完全である。…頂生花序節のわが国のすべての種, 側生花序節のシオジ・ペンシルバニヤシオジ・アメリカシオジ。(II)胚は十分成長していないし, 形態もやや不完全である。…側生花序節のヤチダモ・オウシウヤチダモ。2.さらにIの群の種は, タネの生理的な性質によつてつぎのようにわけられる。(a)胚は休眠していない。(α)果皮をとらなくても発芽する。…アラゲアオダモ。(β)果皮があると発芽しにくい。…トネリコ・シオジ。(γ)種皮・胚乳が発芽をおくらせている。…ペンシルバニヤシオジ。(b)胚は休眠している。…アメリカシオジ。IIの群の胚も休眠しているが, そんなにふかくない。これらの観察結果と外国の文献などから, II型のタネのかわつた形態と, ヤチダモのタネにみられるようなかわつた発芽のシカタとは, Bumelioides亜節の特性とおもわれ, またシオジはMelioides亜節の種とおもわれる。