- 著者
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長嶋 洋一
- 雑誌
- 全国大会講演論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.41, pp.253-254, 1990-09-04
- 被引用文献数
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5
コンピュータを音楽の領域に応用する試みの歴史は古く、現在でも各分野において非常に多様なアプローチがなされている。また、現代音楽の世界でも音楽とコンピュータとの関係は早くから注目され、とくに音楽の演奏行為の可能性を拡大するためのツールとして、各種のセンサ技術を応用した方法が試みられている。音楽家の中には演奏パートナーとしてのコンピュータに注目してシアターピースへの応用を試みる動きもある。一方、今世記の音楽の作曲技法の流れとしてはクラシック音楽の理論的行き詰まりに端を発して、調性崩懐→無調音楽→12音音楽→総音列音楽→音群的音楽→?と絶えず進歩しており、その特徴や音楽的意義などが研究されている。そしてこれらの理論に基づく新しい音楽作品の演秦が、古典的な楽器や演秦形態では次第に困難になるにつれて、演奏を実現する手段としてコンピュータ技術を応用した電子音楽の形態がクローズアップされてきた。本稿では、現代音楽の作曲家(中村滋延氏)への技術協力として、1990年6月9日の東京・バリオホールでの同氏の演奏会に向けて製作した実験システムについて報告する。この「Hyper Music Theatre」と名付けられた演奏会においては、音群的作曲技法(とくに全音階的素材の活用)による音楽、パフォーマーの身体行為を音楽に反映させるシアタ一ピース、音響を空間的・動的に展開した音楽、さらには偶然性の音楽といった、各種の音楽要素を盛り込んだ音楽作品として作曲・構成・演出されている。