- 著者
-
高木 浩光
有田 隆也
曽和 将容
- 雑誌
- 全国大会講演論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.42, pp.68-69, 1991-02-25
並列計算機のアーキテクチャを実行順序制御の観点から分類すると、命令のプロセッサ割り当てを実行時に行なう動的順序制御方式と、実行前に行なう静的順序制御方式とに大別することができる.後者は前者に比較して、実行時にスケジュール処理を行なう必要がない、先行制御が容易であるなどの理由により、高速な順序制御が可能であるという特長をもっている.ただし静的順序制御方式では、その性能を最大限に引き出すために、実行前に最適な命令スケジュールを決定する必要がる。この最適化は、命令の処理時間の予測をもとに行なわれるが、この処理時間の予測が適確でない、もしくは、キャッシュ・ミスやネットワーク遅延などの不確定要素によって処理時間が実行時に変動するような場合、実行前の最適化では十分に良い性能が得られない場合がある。これが静的順序制御方式の動的順序制御方式に対する欠点のひとつとなっていた。我々は、従来のスケジュール法を改良することによって、処理時間の予測どおりに実行された場合の性能は従来のままに保ち、かつ処理時間が予測から変動した場合の性能を向上させるスケジュール法:DTSP(Dependent Tasks Same Processor)法を提案した。本スケュール法を用いることにより、従来の方法に比較して5~10%程度の性能向上が得られることが示されている。この性能向上率は、タスクグラフの形状、タスク(命令)の処理時間のバラツキ、プロセッサ数、タスク数などによって変化するものであった。特にタスクの処理時間のバラツキに対しては特徴的な変化がみられた。本稿では、この特徴について明らかにし、DTSP法がどのような環境において特に有効であるか考寮する。