著者
足立 整治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.45-46, 1992-09-28

人間の思考、推量、感情といった高次脳機能の解明は脳科学の中で最も興味深い分野のひとつである。この高次脳機能を解明するための数理的モデルの第一歩としてトライオン神経回路網が提案されている。また回路網によって生成される時空間パターンの複雑さを応用して作曲が試みられている。この得られた音楽を評価するためスペクトル分析を行った。高次脳機能は、i)大脳皮質の広範囲な領域を必要とする,ii)数10秒もの期間持続する,iii)必ずしも入力刺激を必要としたい機能と特徴づけることができる。例としては、作曲・音楽の想起、数学的思考・直感、あるいは囲碁・将棋などのゲームでの判断があげられる。高次脳機能と対照的なものとして、文字・人の顔などのパターン認識が考えられる。これは、限られた皮質野で、普通数100m秒のうちに行なわれる。したがって、高次脳機能には、パターン認識に比べて何10倍ものニューロンの100倍以上も長い期間にわたる発火の時空間パターンが関与していると考えられる。大脳皮質の情報処理のモデル化にあたって考慮しなければならないのはコラム構造である。視覚野にコラム構造があることはよく知られている。Mountcastleはコラム構造が大脳皮質全体に分布しており、1つのコラムが情報処理の基礎的エレメントであるという仮説を提案している。以下ではこのコラムの数学的理想化をトライオンと呼ぶ。少数のコラムで形成されるネットワークのダイナミクスを記述する数理的モデルがトライオン回路網モデルである。

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