著者
明神 もと子
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.77-83, 2004-11-30

ヴィゴツキーの心理学理論は現代の幼児教育に対しても、重要な視点を提供している。子どもを生まれながら社会的存在ととらえ、大人との、また、子ども同士の相互作用の発達における役割を強調する。現下の発達水準ではなく、発達の可能な水準に焦点をあわせた、大人による援助が子どもの発達を促進するという観点は、子ども中心か教師中心の一方の教育方法に傾きやすい日本の幼児教育に多くの示唆を与えている。幼児教育は子どもの心理発達を理解せずにはなりたたない。しかし、発達理論と教育実践の結びつきの必要性は叫ばれても、そのような研究は少ない。心理学で子どもの心理発達を理解しても、それがすぐに、教育方法や評価にむすびつかないからである。ヴィゴツキーの理論は、発達と教育を統一し、幼児教育の独自性を明確に表現している。本稿ははじめに、学会発表をもとに、日本の幼児教育に果たしている心理学研究の実態と課題をしめした。ついで、ヴィゴツキーの就学前教育に関する報告の概要を述べ、そのなかから、発達の最近接領域と幼稚園の指導計画に関する課題をとりだし、日本の研究者の見解もまじえながら考察をした。日本の幼児教育には、子ども中心主義の理念のもとで、系統性を欠くプログラムになり、保育者の指導性があいまいにされていることや学校との連続性が配慮されていないことの問題がある。これらの解決のためには、ヴィゴツキーの就学前教育のプログラムを「自然発生的-反応的タイプ」と特徴づける考えから多くを学ぶことができる。

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