- 著者
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森本 あんり
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.79, no.3, pp.653-675, 2005-12-30
文脈化神学は、ここ数十年の間に社会正義から文化的自己表現へとその関心を移してきた。ポストモダンの諸文化理論もこの変化を後押しし、神学の自己理解もこれに新たな意義を認めるようになった。なかでもアジア神学は、キリスト教史に占める時代史的な先端性のゆえに、今では文脈化神学の主要な担い手となりつつある。この視点から近年の「日本的キリスト教」理解を検討すると、そこには外からの視線で日本の日本らしさを規定するオリエンタリズムの関与が疑われる。加えて、従来無視されてきた非正統的な宗教集団に「みずからを語らしめる」という社会学的な接近方法は、研究者=救済者という構図を生んでポストコロニアル批判を招く。アジア神学がこのような虚構性に敏感であらざるを得ないのは、みずからもアジアの「アジア性」について繰り返し問い続けているからである。最後に本稿は、アジア神学を「アジアから神学を問う」ないし「アジアによって神学を問う」という「奪格的神学」の試みとして説明する。