著者
住家 正芳
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.677-699, 2005-12

本稿は、宗教の合理的選択理論と、その仮想敵とされたP・バーガーの初期の論考とを対比させることによって、二つのことを明らかにする。一つは、宗教の合理的選択理論は必ずしも「新しい」理論ではないということであり、二つ目は、市場原理は必ずしも自動的に宗教の多元性や多様性をもたらすものではなく、多元性・多様性を安易に市場とのアナロジーで捉えるべきではないことである。一九九〇年代以降台頭した宗教の合理的選択理論は自らを世俗化論にとって代わるものとして位置付けてきたが、議論の内容自体はかなり類似しており、その点において宗教の合理的選択理論は決して新しいものではない。また、宗教の合理的選択理論はきわめて楽観的な市場観を前提としているが、そのような前提は無批判に許容されるべきものではない。

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