- 著者
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二階堂 徹
- 出版者
- 一般社団法人日本歯科理工学会
- 雑誌
- 歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.6, pp.862-876, 1989-11-25
- 被引用文献数
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重合触媒(カンファーキノン-アミン系)と接着促進モノマー(4-MET)が, 光重合型ボンディングライナーの重合に与える影響と, 象牙質への接着強さに及ぼす影響について検討した.ボンディングライナーの重合挙動の解析は, 示差走査熱量計(DSC)を用いて行った.その結果, 還元剤として2-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を用いると, 4-METの共存する系ではボンディングライナーの重合性が低下した.一方, N-フェニルグリシン(NPG)およびN, N-ジメチルアニリン構造を有するアミンを還元剤として含むボンディングライナーでは, 4-METが共存することによって良好な重合性を示した.象牙質への接着試験の結果, NPGおよびN, N-ジメチルアニリン誘導体である4-ジメチルアミノ安息香酸(DMABA)を含むボンディングライナーは, 4-METの存否にかかわらず良好な象牙質接着性を示した.NPGとDMABAは還元剤としての機能だけでなく, モノマーの象牙質への浸透, 拡散を促進する機能をも有することが示唆された.さらにボンディングライナーとコンポジットレジンに対する照射条件が象牙質の接着強さに与える影響についても検討した.その結果, ボンディングライナー, コンポジットレジンに対する照射時間が長いほど接着に有利であるが, 特にボンディングライナーへ充分な照射を行った後, コンポジットレジンを充〓し, 光照射を行うことが象牙質への高い接着強さを得るために大切であることがわかった.SEM観察, TEM観察により, 光重合型ボンディングライナーの象牙質への接着は, 樹脂含浸象牙質の形成によることが明らかとなった.