著者
風早 康平 篠原 宏志
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.43, pp.53-62, 1994-04-28
被引用文献数
3

マグマの発泡は, マグマの物性に大きな影響をあたえる。特に0.1 wt%以上のCO_2を含むマグマは飽和圧力が2kbに達し, 10 km以浅では発泡している可能性がある。マグマから発泡分離した揮発性成分のCO_2/H_2O比は圧力依存性が非常に大きいため脱ガス圧力計として応用可能である。玄武岩質マグマでは1kb以上の高圧化でもCO_2の脱ガスにより無視しえないマグマの体積膨脹が生じること, H_2Oの脱ガスは100 bar以下の圧力下で重要なことがわかった。玄武岩質マグマは通常, 表層2-3 kmの地殻よりも密度が高いため, 浅所では浮力を持ちえない。したがって, 気泡の濃集等によりマグマのバルク密度が低下しないかぎり, 地表へ噴出することは難しい。伊豆大島の玄武岩質マグマの場合では, マグマ中のCO_2量が0.3 wt%以上含まれないと浮力を持てないことがわかった。マグマ溜り内でCO_2に富んだ気泡が上昇し, マグマ溜り上部に濃集すれば, マグマ溜りの一部はこの浮力を持つ条件が満たしうる。マグマ溜り内のCO_2が濃集したマグマだけが噴火し, 残りはマグマ溜り内に留まると推察される。噴火様式, 揮発性成分量および噴火時の噴出率等の関係を空気-水系などでこれまで得られている流動様式線図を用い考察した。空気-水系の流動様式線図を用い, ガス-メルト系に応用する際に, 粘性, 表面張力, 密度の違いを考慮した結果, 伊豆大島1986年噴火の様式変化を説明しうることを示した。

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