- 著者
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風早 康平
篠原 宏志
- 出版者
- 日本地質学会
- 雑誌
- 地質学論集 (ISSN:03858545)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, pp.91-104, 1996-09-20
- 被引用文献数
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噴火時に放出される揮発性成分は, 噴火時に重要な役割を果たすにもかかわらず, その揮発性の性質ゆえに, 噴火後岩石などに固定されないため, 長い間, その組成や放出量は不明であった。最近10年ほどの間に, 様々な顕微分析法は, メルトインクルージョンの揮発性成分濃度の測定を可能にし, 火山ガスの遠隔観測法(TOMSやCOSPEC)は, 噴火時あるいは非噴火時のSO_2放出量の直接測定を可能にした。観測された火山噴火時のSO_2放出量は, メルトインクルージョンのS濃度とマグマ噴出物量から推定される量よりも一桁から二桁も過剰である(過剰な脱ガス)ことが多いことが明らかとなった。この過剰なSO_2の脱ガスは, anhydriteの分解により生成したSO_2による, あるいは, 噴火前にマグマ溜りに存在していたSO_2を含む気泡によるなどの原因が考えられている。非噴火時の活火山から放出されるマグマ起源ガスは, その存在自体が過剰な脱ガスである。多くの火山で100-4000 t/d規模のSO_2の放出がみられ, 大量のマグマが非噴火時にも脱ガスしていることが示唆される。火山ガス放出量およびマグマの揮発性成分濃度を用い, 伊豆大島, 桜島, 薩摩硫黄島, 有珠, ストロンボリおよびエトナの各火山についてどの程度の量のマグマが脱ガスに関与しているのかを示した。いくつかの火山では, この規模のガス放出が1000年以上にわたり続いており, 大規模なマグマ溜りから継続的にガスが供給されていることを示す。非噴火時の脱ガス機構として, 火道内マグマ対流がマグマ溜りから未脱ガスマグマを火道上部に運搬し, マグマが効率的に脱ガスするというモデルを示し, 伊豆大島を例に検討し, この対流が玄武岩質マグマから流紋岩質マグマまで幅広く生じうろことを示した。長期にわたり生産された大量の脱ガスマグマは, 脱ガスにより結晶化が促進され, ガブロなどとして, 火山体下部に貫入しているものと推定された。