著者
丹田 勝敏 富樫 正樹 竹内 一郎 力石 辰也 小柳 知彦 金川 匡一 平野 哲夫 関 利盛 坪 俊輔
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.1970-1977, 1992
被引用文献数
3

CYAの適正な投与法が移植成績の向上に重要と考え, 移植後早期3ヵ月間の急性拒絶反応とその後の graft の予後に影響を及ぼすと思われる諸因子について retrospective に検討した.<br>対象は1986年3月から北大泌尿器科・市立札幌病院腎移植科及び関連病院にて, CYA中心の免疫抑制法 (2剤: CYA+PRD 10例, 3剤: CYA+PRD+AZAまたはMIZ 44例) で治療した生体腎移植患者54例である. 各症例を治療期間 (1期: 移植日~15日, II期: 16~30日, III期: 31~60日, IV期: 61~90日) に分け, 急性拒絶反応の有無とその後の graft の予後との関係を, CYAの副作用軽減を目的とした併用薬剤 (AZAまたはMIZ) の有無, CYAの初期投与量, CYAの血中 trough level の3項目を中心として検討した.<br>各治療期間においてAZAまたはMIZの有無, CYAの初期投与量は急性拒絶反応出現頻度と有意な関係を認めなかった. しかしCYA trough level がI期で150ng/ml未満, またIII期で100ng/ml未満の場合に有意に急性拒絶反応の発症頻度が高かった (p<0.01).<br>graft の予後については, CYAの初期投与量は有意な関係を認めなかった. また, AZAまたはMIZの併用も2剤治療群と比較して graft 生着率に有意差を認めなかった. 一方CYA trough level がI期で150ng/ml, III期で100ng/ml以上の至適レベル到達症候群の graft の生着率はそれ以外の群と比べ有意に高かった. (p<0;05).<br>以上より特に移植後早期3ヵ月以内のCYA trogh level は移植成績の向上に重要と思われた.

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