著者
森口 英男
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.1485-1492, 1986-09-20

蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムから構成される上部尿路結石80個に対して,2種類の赤外分光光度計(620MX,IRA-2)を用いてwhewellite,weddellite,apatiteの定量を試みた.1)Bellanatoらが報告した吸光度比D780cm^<-1>/D520cm^<-1> (IRA-2)と,TGによって求めた蓚酸カルシウム1水化物含有比whewellite/weddellite+whewelliteには,r=-0.54の相関を認めた.2)高崎が報告した吸光度比D1,100-1,000cm^<-1>/D1,320cm^<-1>(以下Dp/Do)は,TGによって求めたapatite含有率とr=0.96(620MX),r=0.95(IRA-2)の相関を示した.3)吸光度D920cm^<-1>は,TGにより求めたweddellite含有率とr=0.87(620MX),r=0.81(IRA-2)の相関を示した.4)吸光度D780cm^<-1>は,TGにより求めたwhewellite含有率とr=0.89(620MX),r=0.88(IRA-2)の相関を示し,吸光度D520cm^<-1>(IRA-2)は,whewellite含有率とr=0.92の相関を示した.5)各吸収帯の深さ(Fig.1,Fig.2のio,ip)は,TGで求めたwhewellite,apatite含有率とよく相関した.6)3,600-3,000cm^<-1>,920cm^<-1>,780cm^<-1>,670cm^<-1>の各吸収帯について,吸収帯の形状と深さから,3段階に分類した.whewelliteに特徴的な形状を0点,weddelliteに特徴的な形状を2点とし,それらの中間を1点とした.その合計点と,TGにより求めた蓚酸カルシウム2水化物含有比weddellite/weddellite+whewelliteとは,r=0.93(620MX),r=0.95(IRA-2)の相関を示した.以上から,蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムから構成される結石では,赤外分光光度計の機種にかかわらず,赤外分光分析によるweddellite(D920cm^<-1>),whewellite(D780cm^<-1>,D520cm^<-1>),apatite(Dp)の定量が可能であることがわかった.また,吸光度の代わりに,吸収帯の深さを用いることも可能であると思われる.さらに,3,600-3,000cm^<-1>,920cm^<-1>,780cm^<-1>,670cm^<-1>の各吸収帯を,点数化(weddellite score)すれば,蓚酸カルシウム2水化物含有比が求められること,高崎が報告したDp/Doとapatite含有率には,直線的な相関関係があることから,結石試料を秤量しなくても,whewellite,weddellite,apatiteの半定量が可能であると考えられる.

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