前立腺粘液癌は非常に稀な腺癌であり,その病態はあまり知られていない.われわれは免疫染色にてprostate specific antigen(以下PSA)陽性,carcinoembryonic antigen(以下CEA)陰性で,印環細胞を認めず,通常の腺癌を合併した症例を経験した.免疫染色にてPSAとCEAの両方が検索されていた自験例を含む32例の報告について検討した結果,PSA染色陽性23例中17例,CEA染色陽性10例中3例に通常の腺癌の合併が認められた.また,印環細胞は6例に認められ,そのすべてがCEA染色陽性であった.このことは,前立腺粘液癌のなかにはPSA染色陽性で通常の腺癌の一亜型と考えられるものと,PSA染色陰性かつCEA染色陽性で前立腺部尿道の腸上皮化生に由来するものの2つのタイプが存在する可能性が示唆された.