著者
榛葉 賴子 矢田 大輔 小田 彩子 東堂 祐介 伊藤 敏谷 鈴木 康之
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.59-63, 2020

腟内異物が放置される例は、産婦人科ではまれに経験される。症例は 50 歳。スプレー缶の蓋を腟内に自己挿入し、抜去できずに約2年間放置していた。抜去目的に当院を紹介され、腰椎麻酔下に子宮把持鉗子で抜去した。抜去された異物は、石灰化物質で覆われており、成分分析では、リン酸カルシウムとリン酸マグネシウムが検出された。報告では腟内のカルシウムイオン、マグネシウムイオンは尿の成分に由来 すると結論づけられるものが多い。腟内異物の症例では膀胱腟瘻を来していることも多い。本症例では画像検査で膀胱腟瘻などの解剖学的異常はなく、抜去可能であった。長期間放置された腟内異物の診療では、膀胱腟瘻などの解剖学的異常も含め、画像検査で評価することが有用である。
著者
川上 ちひろ 西城 卓也 丹羽 雅之 鈴木 康之 藤崎 和彦
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.301-306, 2016-10-25 (Released:2017-08-10)
参考文献数
9

医療系専門職養成機関において教務事務職員が学生対応で難しいと感じる事例について調査した. 公私立大学医学部・歯学部教務事務職員研修に2013年度から2015年度に参加した教務事務職員143名から得た185事例を分析した.事例は, 学生に問題があるものが多くを占め136事例 (73.5%) であった一方で, システムや教員に問題があるものも含まれた. 医療系専門職養成機関において適切に難しい場面に対応するために, 教員, 事務職員の協働は欠かせないものである.
著者
野村 泰伸 鈴木 康之 清野 健 付 春江 吉川 直也 佐古田 三郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.185-195, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本解説では,静止立位姿勢および定常二足歩行の間欠制御仮説と,それに関連する最近の研究を紹介する.特に,これらの運動を生成する神経制御が実現すべき運動の特徴として,(1)直立姿勢あるいは周期的歩行(歩行サイクル)の平衡状態からの偏差の時間的変動(運動揺らぎ)として表出する関節の柔軟性,および,(2)運動揺らぎの時間パターンが示すフラクタル性あるいはべき乗則に従う長期相関に注目する.さらに,直立姿勢の安定性に関して,(3)体性感覚情報の神経伝達時間に起因する時間遅れ誘因性不安定化(delay-induced instability)を回避する姿勢制御メカニズム,および,(4)対応する制御器のパラメータ変化に対する姿勢安定化メカニズムのロバスト性に関して議論する.運動計測データに表出する(1)およ(2)の特徴は,(3)と(4)に関わる姿勢の安定化メカニズムが機能した結果として生成されると考えられる.そこで,本稿では,安定性と柔軟性という一見相反する運動特性を実現する制御戦略の有力候補の一つである間欠制御仮説に関して議論する.
著者
宮坂 勝之 鈴木 康之 阪井 裕一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.187-193, 1999-03-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

不可逆的な臓器不全に対しては, 十分な代替人工臓器が開発されるまでは, 臓器移植が最終的な治療選択である. とくに先天性の臓器奇形への対応が医療の中心ともいえる小児医療では, しばしば臓器移植医療が唯一の選択肢となる. しかし, わが国での移植医療は, 生・死体腎移植, 生体部分肝移植が臨床的に実践されているものの, 小児医療で最も重要だと考えられる心臓移植や肺移植に関しては, 海外へ出向いての移植医療に頼っているのが現状である.小児患者が臓器提供を受ける場合, 臓器提供源として臓器のサイズや機能の面では成人患者とはきわめて異なった要素や条件の関与が考えられる. 提供臓器の物理的サイズの影響のみを考えても, 移植臓器によっては臓器提供者自身も小児である必要があるなど, 小児医療特異の諸問題がある. しかし6歳未満の脳死判定基準が存在せず, 15歳未満の小児での臓器提供が実質的に困難な現状は医療関係者にも十分に理解されていない. 海外への移植患者の搬送の実際面も含め我々が考えるべき問題点をまとめた.
著者
中村 泰敏 橋本 岳 鈴木 康之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.3, no.J2, pp.92-103, 2022 (Released:2022-11-12)
参考文献数
18

近年では,土木建設等の分野で航空レーザや地上レーザ等の三次元点群測量器が広く活用されているが,そうした測量器を用いるには,運用コストが高い等の課題がある.そのため,特に小規模土工の建設業では測量器の活用が進んでいない.そうした状況の中,LiDAR を搭載したモバイル端末が発売され,三次元点群データの取得を可能にするアプリケーションも数多くリリースされた.しかし,土木建設分野で必要な公共座標へ対応したアプリケーションは少ない.そこで本論文では,任意座標の三次元点群を公共座標へ変換することを従来手法と比較して飛躍的に簡便に行うことを目標とした.また,実際の小規模土工現場の測量点群の座標を本研究成果によって変換した結果が国土交通省の出来形管理要領に示されている測定精度内に収まることも目標とした.
著者
中島 圭一 小野 正敏 佐伯 弘次 住吉 朋彦 高木 徳郎 高橋 一樹 藤原 重雄 大澤 研一 池谷 初恵 栗木 崇 佐々木 健策 鈴木 康之 関 周一 佐藤 亜聖 村木 二郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

中世における生産技術の変革を示す事例として、新たに製鉄や漆器などを見出した。そして、10世紀の律令国家解体によって官営工房の職人が自立し、12世紀までに新興の武士を顧客とする商品生産を軌道に乗せたが、14世紀の鎌倉幕府滅亡と南北朝内乱による武士の勢力交代の中で、より下の階層を対象とする普及品に生産をシフトさせたことが、15世紀の「生産革命」を引き起こしたという見通しを得た。
著者
藤田 裕嗣 吉田 剛 高橋 清吾 鈴木 康之 宇根 寛 牛垣 雄矢 安藤 哲郎 深瀬 浩三 宮里 修 上島 智史 堀 健彦 仁木 宏 山元 貴継 塚本 章宏
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

歴史地理学研究で取り上げられた地図・絵図資料の中には地震・水害など、災害に関わる古地図も多数含まれるが、現在の地図情報には反映されておらず、実際の対策に活かされてきたとは言い難い。そこで本研究課題は、地域中心として機能し続けた城下町に特に注目し、全国各地に残る過去の古地図情報をGISデータ化し、それらをデジタル地図情報に反映させて、防災・災害復興に向けた歴史災害情報をデータベース化し、情報発信することで各地の防災・災害復興への寄与を目指す。2022年度の高校教育「地理総合」必修化も念頭に置き、中等教育に貢献できる歴史災害GISコンテンツの提供も視野に入れる。
著者
境澤 由起江 中村 泰敏 小杉 素子 西田 昌史 和田 真 鈴木 康之
雑誌
研究報告アクセシビリティ(AAC) (ISSN:24322431)
巻号頁・発行日
vol.2022-AAC-20, no.6, pp.1-7, 2022-12-02

本研究では,時間情報を高精度に伝えることのできる聴覚からの刺激と,予測を生起させるリズムの時間的構造に着目し,DTW(Dynamic Time Warping)で手拍子リズムの評価を行うアプリを試作した.主要ユーザーとしては小学生を想定している.ゲームは,前半が手拍子音によるガイドあり,後半はガイド無しとして,手拍子によるリズムへの同期と継続のトレーニングを促す仕様とした.短期的評価では,ガイド手拍子とのズレが小さくなり,手拍子タイミングの正確性と精度,恒常性が向上し,アプリを使うことで時間知覚が向上できる可能性が示唆された.
著者
舟橋 満寿子 長 博雪 鈴木 康之 工藤 英昭 松尾 多希子 許斐 博史 堀口 利之 林田 哲郎 玉川 公子
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.647-656, 1993-09-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
14
被引用文献数
10 2

嚥下・呼吸障害を呈する重度重複障害児者の一部に誤嚥防止を目的として気道・食道の分離を試み,単純気管切開を含め各術式の有効性を比較検討した.その結果,喉頭気管分離術が,下気道感染症の激減,呼吸機能・嚥下機能・栄養状態の改善,経口摂食の獲得,術後合併症の少ないことなど,すべての面で他の術式より優れていた.彼らの生活は受動的になりがちだが,外科的方法も含め呼吸・嚥下という生命の基本のリハビリテーションを適切に行うことで能動的な活動を引き出しえた.ただし術後再閉鎖の可能性は彼らには少ないので,手術的方法を選ぶ場合,十分利点・欠点を検討し,彼らの生活の質の向上をめざすものであるべきと思われる.
著者
鈴木 康之郎 能渡 真澄 田中 圭 沢宮 容子
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.12-24, 2021-07-31 (Released:2021-10-31)
参考文献数
41

In this study, the relationship among interpersonal problems, the discrepancy between expectation and fulfillment of the role behaviors from a significant other, and mental states was examined. In Study 1, we conducted a multiple regression analysis and investigated the relationship between interpersonal problems and mental states including depression, social interaction anxiety, and fear of negative evaluation. The results indicated that five subscales of interpersonal problems, namely, vindictive, cold, socially avoidant, nonassertive, and intrusive were related to mental states. In Study 2, we focused on the discrepancy between expectation and fulfillment of the role behaviors from a significant other. In order to investigate the relationship among the discrepancy between expectation and fulfillment, interpersonal problems, and mental states, we conducted a covariance structural analysis. The results revealed that the discrepancy between expectation and fulfillment were related to mental states indirectly through interpersonal problems. Specifically, the discrepancy between expectation and fulfillment about supportive behaviors was related to mental states indirectly through interpersonal problems.
著者
伊藤 明和 柳田 則之 鈴木 康之 鈴木 浩二 坂堂 正生 田中 八郎 吉田 充治 三宅 弘 丹羽 英人 加藤 通郎
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1539-1551_2, 1979

1. 臨床的に鼻アレルギーと診断された120症例中脱落26例を除いた94症例について, Gamma globulin を Placebo としてHGの二重盲検法による治験を行い, 著効5症例, 有効18症例, やや有効13症例, 無効11症例の成績を得た. やや有効を有効例に含めた有効率は76.6%, やや有効を無効例に含めた有効率は48.9%で, いずれの場合も Placebo 群の有効率を上回った.<br>2. 鼻症状の改善では, 鼻閉の改善においては有意差が認められなかったが, くしゃみ, 鼻汁の改善および総合鼻症状改善度では有意差が認められた.<br>3. 鼻粘膜所見の改善では, 分泌物の量については有意な改善が認められなかったが, 下甲介腫脹, 色調および総合鼻粘膜所見改善度については有意差が認められた.<br>4. 総合改善度については, 推計学的に明白な有意差が認められた.<br>5. 皮内反応, 誘発反応, 鼻汁中好酸球では両群間の成績に明らかな差はないが, ヒスタミン反応では, H群に有意な改善が認められる.<br>6. 副作用は全例に認められなかった.<br>7. これらの成績からして, 鼻アレルギーに対してHGは十分使用に値する薬剤であると考える.
著者
島谷 哲史 渡邉 英一 鈴木 康之 野村 泰伸 清野 健
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.S175_01, 2015

A pacemaker (PM) and an implantable cardioverter defibrillator (ICD) are devices that are inserted into the body to maintain regular heart rhythm in patients with serious heart rhythm problems. Among Japan's aging population, the number of patients requiring PM and ICD implantation has gradually and steadily increased. Therefore, a quantitative assessment of the future number of those patients is not only clinically, but also medical-economically and politically important. In this study, to develop a forecasting model for the number of patients requiring PM or ICD implantation, we analyzed past records of the number of PM and ICD implantation from 2006 to 2013 in Japan. Using a multiple regression analysis, we show the age and gender dependence of the number of PM and ICD implantation in each year, and propose a forecasting model based on age and gender composition rates of population. Moreover, as an application of our model, we estimate the future demand of PM and ICD devices in Japan.
著者
鈴木 康之 森山 聡之 杉本 等
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

1)「携帯端末の高度情報取得」を司るシステムの検討:高度測定の要素技術としてRTK測位に着目し、この手法を援用しシステム化を行い評価することを目指している。具体的には、申請者の所属する機関に過年度設置され観測データが無償公開されたRTK基準局との間で、当該サーバに新たに本研究の経費で電波の送信設備を設け(管理者から内諾取得済み)無線通信を行いながら補正情報をスマホに取り組む方法の、高効率化を含む必要な計測を行う。対象地域が広範なため、加えて小セル方式のWiFiは実用性に乏しいため、WiFi以外に電波法上取り扱いの支障が少ない「デジタル簡易無線(H30年度までに措置済み、フィージビリティの確認済み)」「LoRaWAN等のデジタル系特定小電力無線(H31措置予定)」を利用し、どちらの方式が優位か比較検討する。2)端末とサーバ間インターフェースを司る基本構成の検討:端末の取得データを各種データベースと紐づくサーバに集積するソフトを設計し実装する、現在骨格部分の設計が完了しており、最大の関門を通過した。前項のRTK基地局からの補正データを受信すると同時あるいは逐次に端末の測位データを危険度マップ生成サーバに向け送受信する機構を構築する必要があり、送受の切り替えタイミングや周波数相互間干渉の有無について、パラメータを大きく振った網羅的な試験研究と最適化検討を引き続き行っている。3)単体での運用によるフィージビリティの確認:今後、優先順位づけの基本となる「勝率データ」の蓄積の有効性について検討する予定である。端末1台を試作し100か所の「出発地点」と20種類の「水害到来シナリオ」を設定し高度測定・結果判定・サーバへの蓄積の状況を確認する準備が整った。4)その他:測位航法学会・日本災害情報学会・地理情報システム学会等において情報交換を行う。H30年度は日本災害情報学会で発表した。
著者
村上 恭通 鈴木 康之 槙林 啓介
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2018年度は東寺領新見荘がおかれた岡山県新見市、弓削嶋荘がおかれた愛媛県上島町で次のような調査を実施し、研究成果を得た。新見市においては前年度、神郷高瀬地区で実施した踏査成果を前提に、5月に貫神ソウリ遺跡、鍛冶屋床遺跡において地中レーダー探査を実施した。その結果ではいずれの遺跡においても明確な構造物の輪郭が捉えられないため、10月、11月に試掘調査を実施し、貫神ソウリ遺跡では後世の土地削平、製鉄関連施設が根こそぎ滅失し、縁辺部にスラグ原のみを遺していることが判明した。これに対し、鍛冶屋床遺跡は石組の構造物を遺し、小舟状遺構の一部を確認し、地下構造が残存していることを明らかにした。放射性炭素年代測定により、前者が13世紀後葉、後者が15世紀後葉~16世紀前葉であることもわかった。これらの遺跡以外にも踏査により新畑南遺跡、永久山一ノ谷遺跡でスラグ原を確認し、スラグ噛み込み木炭を測定した結果、いずれも16世紀を中心とする遺跡であることが判明した。愛媛県上島町では8月に佐島・宮ノ浦遺跡(Ⅱ区)を発掘調査し、併行して上弓削・高濱八幡神社の調査も行った。宮ノ浦遺跡では10~11世紀の遺物をともなう灰白色粘土層と厚い焼土層を検出した。これらは粘土を用いた構造物で、なおかつ焼土を生成するような施設の残骸であり、生産活動に関連する可能性が考えられる。高濱八幡神社は2013年に小規模な試掘を行い、揚浜式塩田の浜床の可能性の高い硬化面を確認していたが、この発掘調査により、一定の面積を有し、砂堆上を整地して粘土を貼り付けた塩田浜床であることを実証した。浜床層に含まれる木炭を資料とした年代測定の結果、下層は9世紀、上層は12世紀を中心とする年代を示し、古代に造成された塩田が中世前期まで使用されていたと考えられるようになった。