著者
岩室 紳也 古田 昭 岩永 伸也 野田 賢治郎 波多野 孝史 中條 洋 田代 和也
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.35-39, 1997-01-20
被引用文献数
4 2

(背景と目的)新生男児の大半は包茎であるが,包茎に関しては明瞭な治療指針がない。われわれは新生児期から包皮を翻転し,包皮内の清潔を保つ指導をすることで亀頭部を露出できる可能性について検討した。(対象と方法)1994年1月より1995年10月の間に当院で出生した男児の母親に対して新生児期からパンフレットとビデオで包茎と包皮翻転指導の有用性について説明した後に泌尿器科医が母親に対して包皮翻転指導を実施した。指導内容は1)無理のない範囲で包皮を翻転し,ガーゼ等で包皮内面や亀頭部を陰茎根部に向かって拭く,2)包皮の翻転はおむつを替える度と入浴時に行う,3)操作後は包皮を戻すを原則とした。包皮翻転の進捗状況は1ヵ月健診時に泌尿器科医がチェックし,亀頭部が完全に露出できる状態を完了とした。(結果)初診時の亀頭部の用手的露出度を不可(0)〜亀頭部中間(III)〜完全(VI)の7段階に分類した。新生児538例中,亀頭部を完全に露出できるVI度の症例はなかった。しかし,包皮翻転指導を行った結果,継続的に経過観察し得た372例は埋没陰茎の2例を含め全例亀頭部を完全に露出することができた。亀頭部が完全に露出できるまでに要した期間は,0度は平均2.94月,III度は1.78月,V度は1.22月,全体の平均2.32月であった。指導に伴う特記すべき合併症はなかった。(結論)新生児期から包皮を翻転し亀頭部を露出する指導を徹底することで,真性包茎状態の新生児でも経過観察できた企例が仮性包茎となり,手術を回避することが可能になると思われた。

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