著者
西條 剛央
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.97-108, 2002-08-10

生後1カ月の乳児とその母親16組を対象として,1カ月時から7カ月まで1カ月おきに「抱き」の縦断的観察が行われた。そして,ダイナミックシステムズアプローチに基づき,乳児の身体発達・姿勢発達・行動発達の3側面から,「横抱き」から「縦抱き」への移行に最も影響するコントロールパラメータが検討された。その結果,乳児の「横抱きに対する抵抗行動」が最も縦抱きへの移行に影響力のあるコントロールパラメータとなっていることが明らかになった。次に,縦抱きへの移行プロセスを明らかにするために,母親の言語報告と通常抱き場面における縦抱きへの移行場面を撮影した事例を質的に分析した。その結果,横抱きから縦抱きへと移行プロセスは,以下の3パターンがあることが明らかとなった。(1)乳児が抵抗を示しはじめると,母親は,緩やかな間主観的な解釈を媒介として,乳児が安定する抱き方を探索し,その結果「抵抗」の収まる縦抱きに収斂する。(2)乳児の首すわりといった身体情報が母親に縦抱きをアフォードする。(3)上記の(1)と(2)の双方が影響を与え縦抱きへと移行する。以上のことから「抱き」という行為は,母子の相互作用を通して一定の方向へ自己組織化していく行為であることが示された。

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母子間の「横抱き」から「縦抱き」への移行に関する縦断的研究 : ダイナミックシステムズアプローチの適用 http://t.co/HjbsoYIJ

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