- 著者
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TANSUVAN Prasit
- 出版者
- 一般社団法人日本品質管理学会
- 雑誌
- 品質 (ISSN:03868230)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.36-38, 1996-04-15
タイ経済の成長率は,89年から93年まで年率9.7%というように急激な成長を遂げ,ASEANでは最も大きい経済国である.海外からの投資の中で日本が最も重要であり,今や日常生活の至る所にタイで生産された日本製品があふれている.日本企業が進出してくろと当然のことながら,日本的マネジメントの技術,あるいはTQCが様々な形で持ち込まれる.たとえば,日本電装のタイの子会社は10年以上も前からQCCを導入し,数年前からは方針管理を導入し成功している.しかしながら,これらは親会社の資源やノウハウが導入できる日本または日本とのジョイントベンチャー企業での話であり,現地のタイ企業ではそのような機会は与えられていない.一般論として言えば,現在タイにはTQCは普及していない.それはタイの環境や人を変えるための専門家がほとんどいないことにその理由がある.TQCのコースはあるが,それに出席し感心するだけであり,仕事に戻るとすっかり忘れてしまう.たとえTQCを導入したいと思ってもどのようにスタートさせればよいのかわからない.さらにスタートのさせ方を知っていても次にどのように道を進めばよいのかわからないといった具合である.このような進め方の専門コンサルタントが不足で,現在タイ国中で1人から2人といった現状である.タイの仕事のやり方は,プロダクト・アウトで問題が起きてもまず自分のミスではないという態度,常にノープロブレム,PDCAのDだけ等々で例えられるように,まずこれを変えなければ,いくらTQCの高尚なツールを持ち込んでも意味をなさない.現在いくつかのTQCのプロモーションを図るプロジェクトが実施あるいは計画されているが必ずしも十分ではないと考えられる.今後タイのTQCのプロモーションのためには,具体的でしかもインパクトのある計画を打ち出すことが急務であると思われる.