- 著者
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宇良 千秋
矢冨 直美
- 出版者
- 一般社団法人日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.1, pp.34-41, 1997-04-30
- 被引用文献数
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本研究では高齢者に笑いを誘う刺激を提示し, その間に起こった笑いの表情の表出度(頻度・持続時間・強度)に対する年齢と認知能力の影響について検討を行った。サンプルは高齢者福祉センターに通う60歳以上の男女54名であった。実験は個別に行った。被験者に対して笑いを誘発する2つのピデオ刺激を提示し, その間の被験者の表情をビデオカメラで撮影した。被験者はそれぞれの刺激に対して感じたおもしろさの強度を評定した。さらに, 認知能力を測定するテストとして絵画配列課題を施行した。2名の研究者が独立に笑いの表情の判別および表出度の測定を行った。分析の結果, 認知能カによって笑いの表出度に有意な差はみられなかった。しかし, 刺激の種類によって笑いの表出度に有意な年齢差がみられ, 場面展開の速い刺激において前期高齢者より後期高齢者の笑いの表出度が小さかった。また, 笑いの表情が表出されているにもかかわらずおもしろいと感じなかった者や, 逆に, 笑いの表情が表出されていないのにおもしろいと感じた者が相当数おり, 表出と主観的情動経験との間に有意な相関はみられなかった。表出の傾向として, 約半数の被験者の表出強度が口角や頬がわずかに動く程度のごく弱いものであったこと, いったん表出された笑いが消失されずに保持される者が少なくなかったことが示された。