- 著者
-
佐藤 眞一
下仲 順子
中里 克治
河合 千恵子
- 出版者
- 一般社団法人日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.2, pp.88-97, 1997-07-30
- 被引用文献数
-
3
年齢アイデンティティのコホート差, 性差, およびその規定要因を生涯発達の視点からとらえるために, 8-92歳の一般住民女性1,026名, 男性816名の合計1,842名を対象に調査を実施した。年齢アイデンティティの指標として, 感覚年齢(実感年齢, 外見年齢, 希望年齢の3種類)および理想年齢の4種類の主観年齢を測定した。主観年齢の暦年齢からの偏差を年齢コホートの変化過程に沿って検討すると, 主観年齢が自己高年視から自己若年視へと転じる現象のあることが明らかとなった。男性ではその転換が青年期(18一24歳)前後でみられたのに対して, 女性では思春期G3-17歳)前後に生じていた。また, 感覚年齢では, 男性が成人前期(25-34歳)から成人中期(35-44歳)で変化が少なく, 女性では青年期から成人前期(25-34歳)にかけての変化が少なかった。理想年齢では, 男女とも青年期以降変化が少なくなる傾向にあったが, 男性の場合には成人後期(45-54歳)から, 女性では初老期(55-64歳)から再び変化が大きくなった。年齢アイデンティティの規定要因を検討したところ, 教育年数, 健康度, 自尊感情, タイプA, 女性性に何らかの有意な効果がみられたが, いずれの主観年齢においても暦年齢の効果が最大であった。このことから, 年齢アイデンティティあるいは主観年齢に対しては, 社会的な要因ばかりでなく加齢に伴う心理学的時間感覚ないし時間評価も同時に影響していると思われた。