- 著者
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小俣 謙二
- 出版者
- 社団法人日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.8, pp.775-781, 1995-08
個室の領域化は自己形成の途上にあり情緒的にも不安定な時期にある青年にとって重要な問題である.他方,わが国では子供部屋は居住空間の中で物理的に確保されているものの,他者がそこに無断で入ることも容易にできる.このような状況では,なわばり行動が青年の部屋の使い方や心理的自立性の発達において重要な役割を果たすと考えられる.この可能性を検討するために質問紙調査を実施し,以下の結果を得た.防御的態度は男女ともあまり強くなかったが,それは負の感情にあるような場合の男子の部屋の使い方に影響を及ぼす.もう一つのなわばり行動である空間の自己表出化については,個室の自己表出性を高める者ほど部屋に対して肯定的な感情をもち,心理的自立性も高いという結果が得られた.これらの所見は個室の領域化が青年の日常生活において重要な役割を果たすことを示している.