- 著者
-
日浦 慎作
松山 隆司
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-パターン処理 (ISSN:09151923)
- 巻号頁・発行日
- vol.82, no.11, pp.1912-1920, 1999-11-25
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
-
13
有限の開口径をもつレンズで撮影した画像には,奥行に関する情報がぼけとして現れる.これを利用した距離計測はDepth from Defocusと呼ばれ多数の研究例があるが,高精度な距離計測と安定な完全合焦画像の復元はぼけの大きさに関するトレードオフの関係にあり両立は困難とされてきた.これはぼけの形態を決定する瞳(開口)形状を単なる円形としているからである.そこで我々は,先に提案した多重フォーカスカメラにテレセントリック光学系と構造化瞳マスクを組み合わせ,安定かつ高精度に距離画像と完全合焦画像を同時に求める手法を提案する.多重フォーカスカメラから得た複数の画像を用いることにより,表面テクスチャの種類に依存しない解析が可能となる.更にテレセントリック光学系を用いることで,ぼけ現象は位置不変な畳込み演算となり解析が容易となる.構造化された瞳形状により,ぼけによる情報損を最低限に抑え,高精度な距離計測と安定な合焦画像復元の両立が可能となる.結果として,ぼけを含んだ画像に含まれる距離とぼけのない原画像に関する情報をほぼ完全に分離し取り出すことが可能であることを示す.