著者
朴 鎔燮 北岡 裕子 佐藤 嘉伸 上甲 剛 中村 仁信 田村 進一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1618-1627, 2001-08-01
参考文献数
18
被引用文献数
6

CTスキャナの高速化高解像度化により,胸部全体の3次元CT画像が取得可能になってきた.本論文では,異なる呼吸相での胸部CT画像から肋骨の運動を解析する手法を提案する.提案手法では各肋骨を肋骨の中心線に相当する曲線として表現し,肋骨運動の解剖的な知識に基づいた誤差関数により曲線の繰返しレジストレーションを行い,肋骨の回転中心軸と軸周りの回転角度を計算する.画像シミュレーションにより,中心線抽出精度,レジストレーション精度,提案した誤差関数の収束性の評価を行った.提案手法を4人の健康ボランティアのCT画像に適用することにより評価し,計測結果を論じた.本手法は,単純性と精度の面で肋骨の呼吸運動の計測に有用であることが示された.
著者
宮川 道夫 川田 洋平 Mario Bertero
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1512-1521, 2001-07-01
参考文献数
17
被引用文献数
10

チャープパルスと信号処理技術を用いて生体の内部構造及び温度変化量の分布を計測するチャープパルスマイクロ波CT(CP-MCT)によって獲得されるCT画像を数値計算により求める手法を開発した. ガウスパルスを用いて送受信アンテナ間の余効関数をFD-TD法により計算し, これに時間軸で入カチャープパルス信号を畳み込み, 実測と同様の信号処理を行って1点の計測信号を生成する. この計算を並進走査軸の各点で繰り返し, 投影データを得てCT画像を生成する. 余効関数法と名づけたこの計算手法の妥当性を, 分解能や温度変化量計測の実測結果とそれを模擬した計算結果とを比較することによって示した. 余効関数法を用いれば, 実測が困難な撮像系の点広がり関数を求めることも可能である. また, ヒト頭部の解析モデルを作成して減衰量分布や温度変化量分布のシミュレーションを行い, CP-MCTによる生体撮像の可能性について検討した.
著者
坂野 秀樹 陸 金林 中村 哲 鹿野 清宏 河原 英紀
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.2276-2282, 2000-11-25
参考文献数
8
被引用文献数
5

音声の位相情報を群遅延に基づいて表現することにより, 位相特性の制御を可能とする声質制御方式を提案する.提案方式は, 位相特性を群遅延領域で制御するため, 原音声の位相から零位相まで連続的に変化させることができる.また, 音声の特徴に基づき部分的に零位相化を行っているため, PSOLA法などの手法で見られる, ピッチ変換率を大きくしたときの劣化を軽減させることができる.ピッチ変換音声を作成して主観評価実験を行った結果, ピッチ変換率が1倍の場合に, 零位相合成, PSOLA法, 提案法のMOS値が, 男声の場合はそれぞれ3.6, 4.3, 4.3, 女声の場合はそれぞれ, 3.8, 4.2, 4.3であった.ピッチ変換率が3倍の場合には, それぞれの方式のMOS値が, 男声の場合に2.8, 2.4, 2.7, 女声の場合に1.6, 1.4, 1.7となった.これらの結果から, 提案方式は, ピッチ変換率が小さい場合には, PSOLA法に匹敵する高品質な音声が合成でき, ピッチ変換率を大きくした場合には, PSOLA法特有の劣化を減少させることができることがわかった.また, 本論文では, ピッチ変換を行った際にどのように位相特性を変化させるのが適当であるかについても検討し, ピッチを上昇させた際に位相特性を零位相に近づけると, 劣化が若干抑えられることがわかった.
著者
堀 智織 加藤 正治 伊藤 彰則 好田 正紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.2407-2417, 2000-11-25
参考文献数
9
被引用文献数
9

本論文では, 確率文脈自由文法(Stochastic Context Free Grammar:SCFG)を大語彙連続音声認識に適用する手法として, 文節単位の係り受け制約をもつSCFGを提供する.SCFGは, N-gramのような局所的な制約だけでなく, 文全体にわたる大局的な制約をも記述できることから, 非常に表現力の高い言語モデルとして知られている.しかし, SCFGのパラメータ推定にはInside-Outsideアルゴリズムを用いる必要があり, 非終端記号数の3乗, かつ入力系列長の3乗に比例する莫大な計算量を要する.そのため, SCFGは大量のテキストコーパスから推定することが難しく, これまで大語彙連続音声認識用の言語モデルとして利用されることはほとんどなかった.提案する文節単位の係り受けSCFGは, Inside-Outsideアルゴリズムの計算量を係り受けの制約により非終端記号数の2乗に, 文節単位の導入により更にその約1/8に削減できる有効なモデルである.EDRコーパスを用いた実験では, 提案法を含む各種SCFGの性能とパラメータ推定に要する処理量を比較し, 提案法が計算量を大幅に削減しつつ, パープレキシティがほとんど増加しいことを示す.毎日新聞コーパスを用いた実験では, 大規模な文節単位の係り受けSCFGを構築し, 大語彙連続音声認識システムに実装する.そして, 語彙サイズ5000の音声認識実験を行い, SCFGによる認識性能はTrigramには及ばないものの, Trigramと併用した場合にはTrigram単独の場合に比べて約14%の単語誤りを削減できることを示す.
著者
日浦 慎作 松山 隆司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1912-1920, 1999-11-25
参考文献数
18
被引用文献数
13

有限の開口径をもつレンズで撮影した画像には,奥行に関する情報がぼけとして現れる.これを利用した距離計測はDepth from Defocusと呼ばれ多数の研究例があるが,高精度な距離計測と安定な完全合焦画像の復元はぼけの大きさに関するトレードオフの関係にあり両立は困難とされてきた.これはぼけの形態を決定する瞳(開口)形状を単なる円形としているからである.そこで我々は,先に提案した多重フォーカスカメラにテレセントリック光学系と構造化瞳マスクを組み合わせ,安定かつ高精度に距離画像と完全合焦画像を同時に求める手法を提案する.多重フォーカスカメラから得た複数の画像を用いることにより,表面テクスチャの種類に依存しない解析が可能となる.更にテレセントリック光学系を用いることで,ぼけ現象は位置不変な畳込み演算となり解析が容易となる.構造化された瞳形状により,ぼけによる情報損を最低限に抑え,高精度な距離計測と安定な合焦画像復元の両立が可能となる.結果として,ぼけを含んだ画像に含まれる距離とぼけのない原画像に関する情報をほぼ完全に分離し取り出すことが可能であることを示す.