- 著者
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長山 格
赤松 則男
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.12, pp.3127-3138, 1997-12-25
文字認識において, 文字輪郭はしばしば用いられる重要な特徴であり, その抽出には輪郭の追跡処理や微分オペレータ等の n×n マスクによるフィルタ処埋が用いられる. しかし, これらの処理には多くの演算が必要であり, 特に大容量画像や大量の画像を処理する場合は処理時間が長くなる要因となる. これに対して本論文では, フィルタ演算を用いることなく高速に文字画像の輪郭を抽出する手法 (DTB; Double-Threshold Binarization) を提案する. すなわち, 濃淡画像として得られる文字画像の濃度こう配に注目し, 異なる二つのしきい値による2値化処埋と XOR 演算により文字輪郭を簡単に抽出することができる. 二つのしきい値を決定する方法としてニューラルネットワークを応用する. DTBの実際的な評価を行うため, ノイズが混在する手書き郵便番号画像に適用し, 輪郭追跡法および微分オペレータ, Sobel オペレータ等の従来用いられている輪郭抽出フィルタと比較検討した. その結果, 処理の高速性, ノイズに対する頑健性, および抽出された文字輪郭の品質などの点において DTB の特長が明らかになった. 更に, より高速な処理を実現するために提案手法の高速化アルゴリズムを示し, 従来手法と比較して最大1/20以下の処理時間で文字輪郭の抽出が可能であることを示す.