著者
広瀬 啓吉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.520, pp.53-56, 2003-12-12

韻律は、文字言語にはない音声言語特有の特徴であり、人間のコミュニケーションにおいては、言語情報はもちろん、意図、態度、感情といったパラ言語情報、非言語情報の伝達に重要な役割を果たしている。しかしながら、この重要性にもかかわらず、特に工学的見地からは、研究の焦点は主として音声の音韻に置かれてきた。音声言語情報処理研究の今後の発展は、韻律の明確な定式化を行った上で、それに立脚して進めることによって初めて可能になると考えられる。このような観点から、韻律に関連した研究を進めているわが国の主要な研究者の緊密な協力により、韻律の基礎から応用までを統合して発展させ、音声言語情報処理の高度化に資することを目的とした文部科学省特定領域研究が2000年10月からスタートした。総括班を含めた8班の計画研究班体制で4年間の研究を進めた結果、韻律のモデル化、韻律の多様性の分析、韻律コーパスの作成、韻律の観点からの音声合成・音声認識の性能向上、韻律を利用した音声対話システムの開発、医療福祉技術の向上等について多くの成果を達成した。本研究は2003年度が最終年度であるが、それによって定着した韻律研究の流れは今後も継続し、真に使いやすい音声言語マン・マシン・コミュニケーションの実現に大きく寄与すると期待される。

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