- 著者
-
山田 玲子
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
- 巻号頁・発行日
- vol.104, no.503, pp.41-46, 2004-12-11
- 参考文献数
- 25
日本語母語話者を対象とした英語音声の知覚、生成、語彙などに関する実験から、母語にない外国語の音韻は知覚・学習が困難であるが、音に着目した訓練を行うことにより、成人でも新しい音韻カテゴリーを形成できることが明らかになった。学習実験を研究手法として用い、訓練の他ドメインや他処理階層への般化効果(転移)を調べた。一連の実験結果、次のことが明らかになった。(1)知覚と生成の間には関連があり、子音では訓練効果が互いに転移する。(2)訓練刺激として視聴覚情報が与えられた場合、聴覚情報を主たる手がかりとして使用する。(3)文章の意味的文脈は、音韻知覚を促進する一方、意味的文脈性の高い文章を使った音韻知覚訓練は知覚能力が上昇しない。(4)音韻の混同が単語の意味の混同を引き起こしている。(5)単語翻訳学習課題において音声刺激を対呈示しても、翻訳成績、学習効果共に促進されない。これらの結果から、第二言語の音声学習における音声情報の重要性が示唆されると共に、意味的文脈ばかりに頼った学習は音韻知覚学習を阻害すること、音韻知覚の能力が音声単語の認知処理のボトルネックとなっていること、などが示唆された。本稿では、これら基礎研究の結果を紹介するとともに、外国語学習支援システムヘの応用の可能性を探る。