- 著者
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宇野木 早苗
- 出版者
- 日本海洋学会
- 雑誌
- 海の研究 (ISSN:09168362)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.6, pp.637-650, 2002-11-05
- 被引用文献数
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河川およびその流域で行われるさまざまな事業が,河川が注ぐ沿岸海域にどのような影響を与えるかが,4項目を取り上げて考察された。一つは川からの取水の問題で,取水によって海域の流れ,特に鉛直循環が著しく弱まり,海域の環境が悪化することが豊川用水事業を例に説明された。二つは川と海を断ち切る河口堰の問題で,ここでは特に諫早湾干拓事業の潮受堤防は長大河口堰であるとの認識の上に,潮汐・潮流の減少と膨大な千潟・浅瀬の喪失のため,また巨大汚濁負荷生成システムが機能して,有明海の顕著な環境悪化が生じたと解釈された。三つは沿岸の地形,自然,漁業環境を破壊する川からの砂供給の減少の問題で,球磨川を例にしていかに減少量が莫大であるかが示された。四つには流域の森林破壊の影響が議論された。河川事業の海域への影響は,河川内と異なって一般に緩やかに時間をかけて顕れ,また開発が進んだ内湾においては他の人為的影響と重なって判別が難しく,取り返しがっかない状態が生じやすい。事の重大性を認識して,研究の推進の必要性,および川と海を一体とした発想と管理が特に河川関係者に必要であることが,強調された。