- 著者
-
内藤 篤
- 出版者
- 日本昆虫学会
- 雑誌
- 昆蟲 (ISSN:09155805)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.4, pp.255-"262-1", 1960-12-10
1959, 1960年の厳寒期に, シロイチモジマダラメイガおよびマメシンクイガの越冬幼虫の耐寒性に関する2, 3の実験を行なつた.マメシンクイガの過冷却点は-23.7℃でシロイチモジマダラメイガの-18.9℃より約5℃低かつた.両種は非耐凍性のこん虫で過冷却点に達して凍結したものは短時間で死亡した.また植氷した場合の凍結温度は, 前者は-14.5℃でやはり後者の8.6℃より低かつた.したがつてマメシンクイガの方がシロイチモジマダラメイガより耐寒性が強いと考えられるばかりでなく, 前者は土壤中での越冬深度も深いので, 一層強い寒さを凌ぐことができると思われる.このことはまた前者が寒冷地に, 後者が暖地に分布していることと無関係ではないように思われる.シロイチモジマダラメイガ越冬幼虫の低温障害は, -10℃以上ではほとんど現われないが, -15℃では数時間, -18℃では1時間位で死亡するものが多く, 生育の完うは困難であつた.したがつて自然界では-15℃以下の低温が致命的であると思われる.