著者
田村 道夫
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.73-79, 1962

中尾佐助博士がブ-タンで採集された標本のうちキンポウゲ科のものを同定したが,新種が3つと,新しく独立種とみなしたものが1つある.トリカブト属の新種 Aconitum Nakaoi は花の美しい植物で,欧亜大陸に広く分布する.A. napellus の群に入る.A. patulum は長円錐状の典型的な無限花序をもち,この属ではかなり特異なものと思われる.中井博士はこの属に無限花序をもつ亜属 Subgen. Napellus と有限花序をもつ亜属 Subgen. Cammarum をみとめ,ミヤマトリカブト A. nipponicum やタカネトリカブト A. senanense の花序は無限であるとして前の亜属に分類した.しかし,これらの種では花が上から咲くか下から咲くかは厳密に一定せず,たとえ下から咲いても頂花はある. A. napellus でも頂花はある.Anemone bhutanica は大へん特異なもので,どの亜属に入るのかも明ではない.イチリンソウ属には,イチリンソウ A. nikoensis やユキワリイチゲ A. Keiskeana の群のように,1軸性,すなわち,根茎の先端が地上に現れて頂花で終るばあいと,ハクサンイチゲの群のように,2軸性,すなわち,根茎は無限に伸長し,花茎は根葉腋より生じるばあいとがあり,この属の分類上,もつとも重要な性質である.この新種は,根茎は道立し,根出葉とともに1〜3の花茎を叢生する.この点で,おそらくこの植物は2軸性であろうと思われる.花茎は2つのはなれた茎葉をもち,下部の茎葉腋にしばしば新苗を生じる.Clematis tongulensis は C. montana の変種とされていたものを独立種とみなしたものである.C. montana では,ハンシヨウズル C. japonica などと同様に,花は葉とともに前年の葉腋に叢生し,花後に新苗は伸長するが,C. tongluensis では,花は伸長した新苗の下部葉腋に単生する.これは前のばあいの新苗茎部の節間が伸長したもので,シロバナハンシヨウズル C. Williamsii でもふつうにみられる.

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TAMURA, Michio (1962) "Ranunculaceae of Bhutan collected by S. NAKAO in 1958". 中尾先生が1958年の調査で採集したブータン産キンポウゲ科植物の同定結果。http://t.co/wYqNmymJ
TAMURA, Michio (1962) "Ranunculaceae of Bhutan collected by S. NAKAO in 1958". 中尾先生が1958年の調査で採集したブータン産キンポウゲ科植物の同定結果。http://t.co/wYqNmymJ

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