著者
桑嶋 健一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.166-181, 1999
参考文献数
39
被引用文献数
1

本稿の目的は、医薬品産業における効果的な研究開発のパターン(研究開発の成功要因)とそれに影響を与えるマネジメント上の要因を明らかにすることである。医薬品産業は研究開発が極めて重視される産業であることから、これまでにも研究開発マネジメントをテーマとした研究は数多く行われてきている。しかしながら、その多くは企業レベルの分析であり、研究開発プロセスに法典を当てたものはほとんど見られない。 本稿では、日本における新薬開発の成功事例として、三共のメバロチンの事例を取り上げ、研究開発プロセスに焦点を当てた詳細な事例分析を行う。従来の医薬品産業の研究開発マネジメントに関する研究において、研究開発パフォーマンスに影響を与える要因として特に強調されていたのは、自動車をはじめとする組立型産業においてもその重要性が指摘されている「コミュニケーション」や「情報統合」といった能力であった。それに対して本稿では、他の産業の研究開発と比較した場合に、不確実性が高くその成功確率が極めて低いという特徴を持つ医薬品の研究開発(本稿ではこれを「多産多死型の研究開発」と呼んでいる)においては、研究開発の過程における「go or no-goの意思決定の能力」が極めて重要な組織能力であることが指摘される。

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