著者
田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.247-251, 1975
被引用文献数
1 1

岐阜県大垣市中心部を流れる水門川水系のユスリカ調査ならびにその薬剤防除に関する一連の実験を行なった。水門川水系は水質汚濁防止法が施行される以前は, 高度に汚染され, ユスリカ幼虫の生息をゆるさなかったが, 同法が1971年施行されるに伴い, 沿線工場の排水が浄化され, 水質も急激に改善され, 1973年よりユスリカ幼虫の発生を見るに至った。同河川のユスリカ幼虫の生息密度は20(cm)^2×2cm(土壌の深さ)当り高い地点で126∿186匹に達した。ユスリカ幼虫に対するtemephos水和剤の効果は遅効的であるが確実であった。0.8ppm, 60分間薬液浸漬で, 48時間後死虫率は74%であったが, 生存個体の全部は苦悶状態を呈した。水門川新大橋上からtemephos水和剤を1ppm, 60分間継続投入した場合, 9日後には散布地点から50mおよび1,500m下流の地点でユスリカ幼虫は全く発見できなかった。temephos水和剤のドジョウに対する毒性は極めて軽微であり, ユスリカ防除に使用する濃度では全く影響ないことを知った。なお, 本論文投稿直後, 井上・三原(1975)はモデル水路を利用した実験で, セスジユスリカ終令幼虫に対して, temephosが最も有効であり, 1ppm 10分間投入で, 羽化阻止効果が認められたと報告した。そして, 実際の河川では, さらに投入時間を延長する必要をうたっているが, 今回の一連の試験結果は井上・三原の推論を支持するものである。本実験の実施にあたり大垣市環境部衛生課, 環境課ならびに畜産課の各位, 同市かめや薬品橋本紀男氏および三共(株)名古屋支店大橋武定, 日比野弘和の両氏には多大のご援助をいただいた。又, 有益な助言と校閲を賜わった鹿児島大学医学部, 佐藤淳夫教授, 三共(株)池田安之助博士に深謝する。

言及状況

外部データベース (DOI)

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こんな論文どうですか? 都市河川の汚染とセスジユスリカの大量発生ならびにその薬剤防除の試み,1975 http://ci.nii.ac.jp/naid/110003815147

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