著者
渡部 泰弘 平尾 和也 田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会地方支部
雑誌
日本衛生動物学会地方支部大会要旨抄録集 第54回 日本衛生動物学会東日本支部大会要旨抄録集
巻号頁・発行日
pp.3, 2003 (Released:2003-07-01)

先に、チャバネゴキブリは糞や死骸を通常は食べないことを報告した。マウス固形試料(餌)、ゴキブリ乾燥糞、乾燥ゴキブリ死骸を並べておいた場合、チャバネゴキブリは常に餌を選んだ。また、糞や死骸のみでは成虫の寿命が短く繁殖も悪化した。今回、クロゴキブリ成虫(雌雄、幼虫)を供試して同様な試験を試みた。クロゴキブリ雌雄及び幼虫は3種の試料(マウス固形餌、乾燥クロゴキブリ糞、クロゴキブリ乾燥死骸)が並置されたときは、常に餌を最も好み、次いで死骸を選んだ。自身の糞はほとんど消費されなかった。これは、チャバネゴキブリと同じ傾向であった。2種の組み合わせ(餌と糞、餌と死骸、糞と死骸)が並置された場合、クロゴキブリは、餌>糞、餌>死骸、糞<死骸を選択した。餌と水以外の試験区では、共食いが頻繁に観察された。水と餌では、40日までほとんど死亡しなかった。他方、水と糞、水と死骸では15日経過後から死亡する個体が見られた。
著者
渡部 泰弘 田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-8, 2010
被引用文献数
3 1

Lethality and repellency of emulsifiable concentrates (EC) or microencapsulated concentrates (MC) of fenitrothion, diazinon, propetamphos and chlorpyrifos-methyl were examined with 12 separate colonies of the German cockroach, Blattella germanica. Field colony individuals were collected from 5 different restaurants situated on the 7th floor of a building in Koto-ku, and 7 restaurants located on the 5th floor of another building in Meguro-ku, Tokyo, Japan. Adult male progeny of each colony were released into a container with insecticide-treated harborage surfaces. All colonies, except for the one from the Italian restaurant in Koto-ku, showed low levels of susceptibility to fenitrothion EC and MC, diazinon EC and MC, chlorpyrifos-methyl EC and propetamphos EC. However, the levels of lethality against colonies varied even though they originated from the same floor of a building. The poor efficacy of the test insecticides was probably a result of long-term use of these compounds in this area of building. Various susceptibilities among colonies indicate that the German cockroach does not frequently hybridize between restaurants even located on the same floor of a building. Propetamphos MC was the most effective against all exposed colonies, followed by fenitrothion MC and diazinon MC. Changes in behavior toward insecticides and insecticide resistance in the EC formulations may cause low mortalities in cockroaches. The test colonies showed two different types of low susceptibilities, one due to high aversion to the test formulations and another due to insecticide resistance.
著者
田原 雄一郎 神谷 桜 渡部 泰弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-107, 2011-06-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
10

粘着トラップによる3種ゴキブリ(チャバネゴキブリ,ワモンゴキブリおよびトビイロゴキブリ)の捕獲率「(捕獲数÷放飼数)×100」は日ごとに低下した.これは粘着トラップを避ける個体が増加したことによると判断した.チャバネゴキブリでは令別,雌雄での比較で♂>♀>老齢>若令の順に捕獲率は高かった.特に,若令は捕獲されにくかった.一週間にわたり捕獲をまぬがれた個体(経験群)と新しく放飼された個体(未経験群) では,常に前者の捕獲率が低かった.これは,経験ゴキブリ群が粘着トラップに捕獲されないような行動を「学習」したものと推察した.経験群をしばらくトラップから避けて飼育する中断期間を与えたところ,トラップを避ける行動は5週間まで維持された.粘着板を避けるには触角の働きが大きいと思われる.触角の先端部の微毛は粘着面を感知するだけでなく,粘着面への付着を防いでいると考えられる.生きている間は触角を空中に保持し,死亡すると付着した.モニタリングや殺虫剤の効果判定の目的で,粘着トラップを連続して使用したり,頻繁に使用したりすると,トラップ捕獲率が低下し,得られたゴキブリ指数がその場のゴキブリ生息状況を正しく反映しない可能性があることに留意すべきである.
著者
田原 雄一郎 望月 香織
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.139-143, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
2

33種のハーブのエタノール抽出液をベニヤ板製のゴキブリのシェルター(5cm×5cm, 5mm隙間)に浸漬させ, チャバネゴキブリ10頭(♂または♀)を放ったプラスチック円形容器(半径15cm, 高さ17cm)に無処理シェルターとともに対角の位置に置いた.それぞれのシェルター区に48時間で落下した糞の数から忌避性を求めた.その結果, デイル, セロリ, キャラウェイ, クミン, コリアンダー(以上, セロリ科), シナモン(クスノキ科), メース(ニクズク科)およびトウガラシ(ナス科)を処理したシェルター区には糞の落下数が極めて少なく, 無処理区のシェルターに90%以上の糞が落下した.これは, これらのハーブを処理したシェルターを忌避したからと判断した.忌避性は1ヵ月以上持続した.また, ハーブ抽出液を80倍程度希釈しても効力は維持した.他方, アニス, サンショ, オニオン, ユーカリなどの抽出液では誘引性が確認された.
著者
高橋 知代 久志本 彩子 小長谷 貴昭 田原 雄一郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-4, 2006-06-30
参考文献数
7

Biodegradable packaging buffers made from corn or wheat starch have replaced plastic foambuffers as packaging materials. The German cockroach, Blattella germanica, the smoky-brown cockroach, Periplaneta fuliginosa, and the brown-banded cockroach, P. brunnea consumed the biodegradable packaging buffers as food when they were kept in an arena with water, yet they hesitated to eat a urethane buffer. The cockroaches could survive and most of them could propagate for generations feeding on packaging buffer. Therefore, the biodegradable packaging buffers should be removed from factories immediately to avoid cockroach infestation.
著者
田原 雄一郎 望月 香織
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.139-143, 2005
被引用文献数
2

33種のハーブのエタノール抽出液をベニヤ板製のゴキブリのシェルター(5cm×5cm, 5mm隙間)に浸漬させ, チャバネゴキブリ10頭(♂または♀)を放ったプラスチック円形容器(半径15cm, 高さ17cm)に無処理シェルターとともに対角の位置に置いた.それぞれのシェルター区に48時間で落下した糞の数から忌避性を求めた.その結果, デイル, セロリ, キャラウェイ, クミン, コリアンダー(以上, セロリ科), シナモン(クスノキ科), メース(ニクズク科)およびトウガラシ(ナス科)を処理したシェルター区には糞の落下数が極めて少なく, 無処理区のシェルターに90%以上の糞が落下した.これは, これらのハーブを処理したシェルターを忌避したからと判断した.忌避性は1ヵ月以上持続した.また, ハーブ抽出液を80倍程度希釈しても効力は維持した.他方, アニス, サンショ, オニオン, ユーカリなどの抽出液では誘引性が確認された.
著者
渡部 泰弘 田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-8, 2010
被引用文献数
3 1

Lethality and repellency of emulsifiable concentrates (EC) or microencapsulated concentrates (MC) of fenitrothion, diazinon, propetamphos and chlorpyrifos-methyl were examined with 12 separate colonies of the German cockroach, Blattella germanica. Field colony individuals were collected from 5 different restaurants situated on the 7th floor of a building in Koto-ku, and 7 restaurants located on the 5th floor of another building in Meguro-ku, Tokyo, Japan. Adult male progeny of each colony were released into a container with insecticide-treated harborage surfaces. All colonies, except for the one from the Italian restaurant in Koto-ku, showed low levels of susceptibility to fenitrothion EC and MC, diazinon EC and MC, chlorpyrifos-methyl EC and propetamphos EC. However, the levels of lethality against colonies varied even though they originated from the same floor of a building. The poor efficacy of the test insecticides was probably a result of long-term use of these compounds in this area of building. Various susceptibilities among colonies indicate that the German cockroach does not frequently hybridize between restaurants even located on the same floor of a building. Propetamphos MC was the most effective against all exposed colonies, followed by fenitrothion MC and diazinon MC. Changes in behavior toward insecticides and insecticide resistance in the EC formulations may cause low mortalities in cockroaches. The test colonies showed two different types of low susceptibilities, one due to high aversion to the test formulations and another due to insecticide resistance.
著者
川口 侑子 牛頭 夕子 水原 寛美 田原 雄一郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.7-12, 2015-05-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7

シリカゲルのゴキブリに対する効果は,粒子径の大きさに左右された.470 meshであれば,1m2あたり3gの処理で感受性系統ならびに抵抗性系統のチャバネゴキブリに対して,24時間で85%以上の個体が死亡した.30 mesh, 40 meshの粒子径のシリカゲルでは殺虫効力が見られなかった.トビイロゴキブリ老齢幼虫に対する殺虫効果 は劣った.470 meshのシリカゲルを室内に7日間放置した時の吸湿の程度は低く,殺虫効力には大きな影響をもたらさなかった.シリカゲルで死亡したゴキブリの肢や触角は硬直し,時間とともに脱落した.一連の試験から,処理面が乾いている場所でのシリカゲル微粉末処理は,チャバネゴキブリ駆除に対し有効で,現場での実用性が期待される.
著者
Monroy Carlota Rodas Antonieta Mejia Mildred 田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.187-193, 1998
被引用文献数
2 13

チャガス病媒介者であるサシガメ(Triatomadimidiata & T. nitida)が生息する土壁の割れ目やすき間をセメントや石灰で埋めることで, 彼等の生息数を減らす事を試みた。双方(セメント及び石灰)の塗装を行った場合, 翌年は平均92%も生息数が減少した。石灰だけでは34%の減少に止まった。また, 部分的な改善(塗装)では53%の減少であった。他方, 何も施さない場合の生息数には変化がなかった。しかしながら, Tripanosoma cruziの保有率には変化がなかった。また, 研究室内の試験で壁材の塗装はサシガメの寿命に変化を及ぼさなかった。
著者
田原 雄一郎 Monroy Carlota Rodas Antonieta MEJIA Mildred ROSALES Regina
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.87-92, 1998
参考文献数
20
被引用文献数
4 17

グアテマラ各地の6村落の農家でチャガス病を伝搬する2種サシガメ, Triatoma dimidiata及びRhodnius prolixusの防除実験を行った。前者に対しては土壁の表面, 隙間, 割れ目に散布し, 後者では草葺き屋根の天井に散布した。人-時間採集評価でlambda-cyhalothrineは両種に対して30-60mg(a.i.)/m^2の薬量で極めて有効で, 3-4ヵ月以上にわたり再発生を許さなかった。また, deltamethrin液剤及び粉剤, diazinon, propoxurの液剤は200-600mg/m^2の薬量で2-4ヵ月の残留効果を発揮した。他方, fenitrothion及びdiazinonの液剤の効力は600-1000mg/m^2に増量したにもかかわらず劣った。また, permethrin燻煙剤は隙間の多いグアテマラの農家では有効でなかった。Deltamethrinは眼粘膜や鼻粘膜刺激が強く室内散布剤としては問題が残った。
著者
田原 雄一郎 Monroy Carlota Rodas Antonieta MEJIA Mildred PICHILLA Reginaldo MAURICIO Heberto PEREZ Miguel
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.331-336, 1998
被引用文献数
1 1

1995年緒方及びSamayoaはグアテマラのカリブ海に面した港町, Puerto Barrios及びSanto Tomas de Castillaでヒトスジシマカの生息を確認した。2年間経過後の1997年, 雨季と乾季に再び同じ地域で本種の分布拡大を調査した。今回, 同市内で調査地域を拡大したにもかかわらず, 生息は1995年と同じ地域からのみ確認できた。グアテマラ市へ至る国道沿線, グアテマラとメキシコ, ホンジュラス, エルサルバドルの国境地域, 太平洋岸の港町などでも調査したが新規な発見はなかった。本種は同一地域にあっては都市部の比較的小さな水域, 例えば, 古タイヤ, 空き缶に発生した。雨季には古タイヤと捨てられた空き缶, プラスチックに溜まった水たまりに多く見られた。ヒトスジシマカとネッタイシマカの採集比率を比較したところ, 乾季は後者が, 雨季は前者が多かった。
著者
田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.247-251, 1975
被引用文献数
1 1

岐阜県大垣市中心部を流れる水門川水系のユスリカ調査ならびにその薬剤防除に関する一連の実験を行なった。水門川水系は水質汚濁防止法が施行される以前は, 高度に汚染され, ユスリカ幼虫の生息をゆるさなかったが, 同法が1971年施行されるに伴い, 沿線工場の排水が浄化され, 水質も急激に改善され, 1973年よりユスリカ幼虫の発生を見るに至った。同河川のユスリカ幼虫の生息密度は20(cm)^2×2cm(土壌の深さ)当り高い地点で126&acd;186匹に達した。ユスリカ幼虫に対するtemephos水和剤の効果は遅効的であるが確実であった。0.8ppm, 60分間薬液浸漬で, 48時間後死虫率は74%であったが, 生存個体の全部は苦悶状態を呈した。水門川新大橋上からtemephos水和剤を1ppm, 60分間継続投入した場合, 9日後には散布地点から50mおよび1,500m下流の地点でユスリカ幼虫は全く発見できなかった。temephos水和剤のドジョウに対する毒性は極めて軽微であり, ユスリカ防除に使用する濃度では全く影響ないことを知った。なお, 本論文投稿直後, 井上・三原(1975)はモデル水路を利用した実験で, セスジユスリカ終令幼虫に対して, temephosが最も有効であり, 1ppm 10分間投入で, 羽化阻止効果が認められたと報告した。そして, 実際の河川では, さらに投入時間を延長する必要をうたっているが, 今回の一連の試験結果は井上・三原の推論を支持するものである。本実験の実施にあたり大垣市環境部衛生課, 環境課ならびに畜産課の各位, 同市かめや薬品橋本紀男氏および三共(株)名古屋支店大橋武定, 日比野弘和の両氏には多大のご援助をいただいた。又, 有益な助言と校閲を賜わった鹿児島大学医学部, 佐藤淳夫教授, 三共(株)池田安之助博士に深謝する。