著者
岩佐 光啓
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.177-206, 1983
被引用文献数
7

日本, 東南アジア, ニューギニア, アフリカなどから採集された25科63属111種の衛生上重要な双翅目・環縫群のハエ類の口器, とくに唇弁部を中心に比較形態学研究を行い, それらの類縁性を調べ, あわせて環縫群における前口歯の発達と起源についても考察した。イエバエ属(Musca)の口器の走査電子顕微鏡と水酸化カリウム処理による光学顕微鏡の両方の観察により, prestomal teethとdiscal scleriteの外見的・表面的特徴と内容・硬化状態などを明らかにし, これらの特徴に従い, 口器を三つの型に分類した。これらの各群の間には中間移行型が見いだされ, prestomal teethとdiscal scleriteが唇弁部の縮小・尖鋭化を伴い, 未発達なものから発達したものへの徐々の段階的な変化を示す様子が観察され, それに基づいてイエバエ属の口器の進化の過程を考察した。また有弁類においてprestomal teethが発達・硬化した種は捕食性か血液嗜好性に限られ, イエバエ科, クロバエ科, ニクバエ科のハエは食性に関係なく基本的にprestomal teethを有していることが観察された。しかし, ヤドリバエ科とハナバエ科の一部ではprestomal teethは痕跡的かまたは存在せず, さらに無額嚢群と無弁類ではprestomal teethはノミバエの一部に見いだされただけで他はほとんど存在しないことがわかった。これらの事実と環縫群の系統から考えると, 衛生上重要な有弁類ハエ類にみられる発達したprestomal teethはハナバエ科の祖先型に起源をもつものと考えられる。

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[あとで] これ読むかなあ・・・ 一応ブクマ。

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