- 著者
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高岡 宏行
鈴木 博
- 出版者
- 日本衛生動物学会
- 雑誌
- 衛生動物 (ISSN:04247086)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.1, pp.7-45, 1984
- 被引用文献数
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19
58
著者の一人鈴木が1978・1979年にタイ北部で採集したブユの標本を分類学的に検討した。その結果, 従来の既知3種のほかに, 7新種, 5新記録種を含む19種のブユが分布していることがわかった。これらはすべてブユ属(Simulium)に属し, さらに, 亜属段階では, ツノマュブユ亜属(Eusimulium)に3種, ナンヨウブユ亜属(Gomphostilbia)に3種, ヒマラヤブユ(新和名)亜属(Himalayum)に1種, さらにアシマダラブユ亜属(Simulium)に12種が分類された。既知3種のうちマレー半島を模式産地とするS. hackeri Edwardsは, タイ国での分布の根拠となっていた副模式標本(雌成虫, 英国国立自然博物館所蔵)が模式産地の標本と異なることから, 分布種から除かれた。同時に当該のタイ国産副模式標本に基づいて, 新種(S. barnesi)を記載した。また, インドのアッサム州より記載されたS. indicum Becherの同物異名とされていたS. nigrogilvum Summersは, 雌雄成虫, 蛹, および幼虫の各発育期で形態的差異が見出されたので, 有効種として復活した。