- 著者
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佐々 学
西野 麻知子
- 出版者
- 日本衛生動物学会
- 雑誌
- 衛生動物 (ISSN:04247086)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.4, pp.317-322, 1996
- 被引用文献数
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3
琵琶湖に発生するユスリカ科Chironomidaeの昆虫については既に佐々, 河合(1987)の年間にわたる調査, および佐々, 西野(1995)の冬期における調査が報告されているが, 今回は年間において最も寒い時期における1995年2月8日の昼間に琵琶湖の南湖の岸2カ所と北湖の岸3カ所で, 捕虫網と吸虫管を用いユスリカの成虫を採集し, かつ湖岸の水面に浮かんでいる成虫, 蛹を拾いあげて, ガムクローラル封入標本として同定を行った。合計して76個体の雄標本が得られ, それらはBiwatendipes motoharui Tokunagaが60,Hydrobaenus biwaquartus Sasa et Kawaiが5,Orthocladius biwaniger Sasa et Kawaiが1,Smittia aterrima (Meigen)が3,Smittia nudipennis (Goetghebuer)が3の既知種に加えて, 今回Biwatendipes biwamosaicus sp. nov。と命名した雄が3個体, およびHydrobaenus biwagrandis sp. nov.と命名した雄が1個体であった。ここに両新種の雄の記載を行った。前者はハネや脚の構造はBiwatendipes属の特徴に一致するが, 触角の構造はユスリカの雌のそれに似た極めて特異な形態を示し, かつハネが異常に幅広い。後者は日本産の本属のうち特にH. togaundecimus (Sasa et Okazawa)に近い形態を示しているが, それより体がはるかに大きく, ARやP/Hの値が大で, SO, CL, PN, などの毛の数も2倍以上, かつ生殖器の形態にも差があって, 明らかに別種とみなされる。