- 著者
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和田 芳武
- 出版者
- 日本衛生動物学会
- 雑誌
- 衛生動物 (ISSN:04247086)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.1, pp.54-60, 1970
- 被引用文献数
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コガタアカイエカの成虫は羽化, 交尾, 吸血, 産卵など一連の活動を主として夜間に行ない, その間に挿しはさまれる昼間には適当な場所に休止するという日周行動を営むが, その様相を解明する目的で1967年夏岡山県倉敷市近郊において色々な成虫休息環境を対象に1.5m立方の蚊帳をかぶせて定量的に採集する方法を用いて時間的観察を行なつた.その結果と, 前報の成績や今回の実験室内の羽化時刻, 雄の外生殖器反転の時間的経過, 吸血から産卵までの所要時間の観察結果などをまとめて次のような推定を行なつた.1)水田などの発生源における蛹から成虫への羽化は主として夜間, 深夜をピークとしておこり, 交尾は次の第2夜以後に行われ, 雌は第3夜以後に吸血し, 2日おいて第6夜以後に産卵する.成虫は原則として夜間は交尾, 吸血, 産卵などの活動をし, 一時的な休止を行うにすぎないが, 昼間は適当な休息場所で静止して過ごす.2)発生源の水田の稲叢には, 夜間は主として新たに羽化した雌雄のみが休息し, 雌はそのまま第2夜まで昼間休息するものが多いが, 雄は新たに羽化したものは翌朝までにかなりのものは飛び去り, 昼間休息しているものは成熟したあと再び帰つて来たものが多い.3)吸血源の近くの茂みには, 夜間吸血後の雌が翌朝まで多数休止している.その茂みが適当であればそのまま昼間も休息するが, おそらく通風や光が多すぎると朝には飛び去る.4)雌雄共, 甘蔗やイチゴの畑のように, 背の低い広葉で深い茂みには高密度に昼間休息する.そこには昼間あらゆる生理期の雌雄の成虫が採集され, 夜間にも若干の残留個体が見出される.