- 著者
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松本 克彦
- 出版者
- 日本衛生動物学会
- 雑誌
- 衛生動物 (ISSN:04247086)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.118-122, 1965
- 被引用文献数
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著者は前報において, コナダニの種類によつて炭水化物の消化酵素の活性度に強弱があることを報告し, またそれがそのコナダニの食性に関係するのではないかと推論した.今回は3種コナダニにおける炭水化物の利用率を観察するために, 種々の炭水化物とエビオス混合飼料におけるコナダニの繁殖状況を観察した.Glucose, lactose, sucrose, dextrine, starchに種々の割合(0, 20, 40, 60, 80, 100%)にエビオスの混合した飼料におけるサトウダニ, ムギコナダニ, ケナガコナダニの繁殖状況を観察した.温度25℃, 湿度は75%R.H.に一定した.1)サトウダニ, 繁殖状況はエビオスのみの飼料よりも, 少糖類を40〜60%加えた飼料での増殖率が高かつた.starchを混じた飼料においてはエビオスのみの飼料より増殖が悪かつた.2)ムギコナダニ, glucose, lactoseを加えた飼料ではエビオスのみの飼料より繁殖が悪かつた.sucroseを20〜40%加えた飼料ではエビオスのみの飼料と比べ増殖率が高かつた.多糖類が40〜60%加わつた飼料の繁殖密度はエビオスのみの飼料より上廻つた.3)ケナガコナダニ, 少糖類混入の飼料の繁殖密度はエビオスのみの飼料より低かつた.しかし, 少糖類20〜40%混入飼料でもかなりの増殖がみられ, 少糖類も相当利用されるものと思われる.多糖類の利用は甚だよく, 多糖類の20%混入飼料での増殖率が最高となつた.4)すなわち, サトウダニでは少糖類の利用が盛んであるが, 多糖類の利用は悪い.ムギコナダニは逆に多糖類の利用度がよく, 少糖類は利用されない.ケナガコナダニは両者の中間の型を示し, サトウダニ程ではないが, 少糖類も良く利用し, 多糖類もムギコナダニにはおよばないが, かなり繁殖に用いられる.