- 著者
-
香山 不二雄
- 出版者
- 公益社団法人日本産業衛生学会
- 雑誌
- 産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.4, 2005-07-20
カドミウムは急性毒性で主な標的臓器は肝臓で, 肝細胞壊死を伴う肝障害を起こす. この時, エンドトキシンを同時に投与すると炎症反応が強くなり, 肝臓から産生される炎症性サイトカインの誘導も多くなる. そのメカニズムは肝細胞壊死により, その周りに炎症細胞浸潤が起こり, 肝臓自身が炎症への反応性が昂進した状態になっていることが, 肝臓薄切切片培養法を用いて明らかとした. その過剰な反応性は抗TNF-alpha抗体で抑制することが出来たことから, 以上のことを証明することができた. 腎臓障害は, 長期間にわたりカドミウムを投与して惹起される. 長期投与していると腎重量が大きくなることが複数の研究者から報告されていた. 病理組織学的には特に正常細胞や異形性のある細胞増殖像が見られることはない. 腎臓組織から産生される炎症性サイトカインを測定するとIL-6が非常の多くなっていることが明らかとなった. このサイトカインがカドミウムで障害を受けた腎臓尿細管細胞の増殖因子として働いていることが明らかにした. 以上のように, カドミウムの毒性発現に炎症性サイトカインの関連を調べたが, 方法論としてはエンドトキシンを併用しており, 活性化された反応を見ることを解析すること研究してきた. 今後は, カドミウムによる免疫毒性の研究で残されているのは抑制系の反応を証明する方法を明らかにしていくことである.