著者
垰田 和史 中村 賢治 北原 照代 西山 勝夫
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.246-253, 2005-11-20
被引用文献数
1 3

新医師臨床研修制度導入以前の研修医の労働や生活の実態を検討する目的で, 国立大学附属病院に所属する102名の研修医について, 連続した4週間の生活時間調査を行った.調査対象とした2,722人日のうち76%の有効回答をえた.平日の平均睡眠時間は5.7時間, 土曜・祝日の平均睡眠時間は6.8時間だった.研修医の40%は睡眠時間が6時間未満で5時間未満の者が17%おり, 外科に所属する研修医の睡眠時間は特に短かった.研修医の睡眠不足は健康を脅かすだけでなく医療の安全性を低下させることから, 新医師臨床研修制度のもとで, 研修医の睡眠時間を含む生活が適切に保たれるよう, 追跡検証する必要がある.
著者
津田 敏秀 馬場園 明 茂見 潤 大津 忠弘 三野 善央
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.161-173, 2001-09-20
被引用文献数
1

医学における因果関係の推論-意思決定-:津田敏秀ほか.岡山大学大学院医歯学総合研究科社会環境生命科学専攻長寿社会医学講座-産業医学においては, 予防施策を講じるにおいても補償問題においても, しばしば業務起因性が問題となる.また近年ではリスクアセスメントにおいても疫学の重要性が増し疫学的因果論を産業現場においても認識する必要が出てきた.我々は, 医学における因果律が確率的因果律として認識される事を明らかにしてきた.この因果律は, 科学のモデルの1つとして見なされてきた物理学においても同様に確率現象として認知されて来た.数学者・物理学者たちは, 因果推論において確率的思考が重要であることを, 不確定性原理が発見される以前に同様に主張してきた.それから, 病因割合, 曝露群寄与危険度割合, 原因確率, 等々で呼ばれる指標を説明した.原因確率(PC)は, ある特定の曝露によって引き起こされた疾病の個々の症例への条件付き確率を知るために用いられてきた.これは, 適当な相対危険度を決定するために曝露集団の経験を使って求められ, 曝露症例への補償のためにしばしば用いられてきた.最近の原因確率に関する議論も本論文の中で示した.次に, 人口集団からの因情報を個別個人の因果情報として適用可能であることを示した.日常生活においてさえ, 我々は因果を考える際に, 多くの人々によって試行された結果に基づいて因果を判断している.その上で, 我々は疫学研究から得られた結果を個人における曝露と疾病の関連に応用することに関して疑う懐疑主義を批判した.第三に, 我々は疫学の手短な歴史的視点を提供した.疫学はいくつかの期間を経て発展してきたが, 日本においては, 近年それぞれの疫学者が学んだ時代に依存して疫学者間で多くの互いに共約不可能な現象を観察することになった.第四に, 疫学的証拠に基づいた判断や政治的応用について, 柳本の分類に基づいて考察した.そして, 判断の理由付けのいくつかの例を呈示した.疫学の分野では因果関係による影響の大きさが確率として認知され, 意志決定にも極めて役に立つ.最後に, 疫学の未来におけるいくつかの課題について考察した.
著者
夏目 誠 村田 弘 杉本 寛治 中村 彰夫 松原 和幸 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.266-279, 1988-07-20
被引用文献数
22

私たちは勤労者のストレス度,特に職場生活のそれを数量化するために,下記のストレス調査表を作成した.Holmesが作成したストレス度を測定する,社会的再適応評価尺度の主要項目に,職場生活ストレッサー18項目,および「私の耐えられるストレス度」,「現在の私のストレス度」の2項目を追加した67項目より構成されている.1,630名の勤労者を対象に結婚によるストレス度を50点とし,それを基準に0〜100点の任意数値記入方式により自己評価させた.得られた結果は以下のとおりである.1.各項目について1,630名と性,年齢,職種,職階,勤続年数(以下,各条件とする)別対象者数から得られた点数の平均値を求めた.私たちは,このようにして得た各項目の平均点数をストレス点数と仮称した.65項目のストレス点数を,高い順にランキングした.1位は「配偶者の死」82.7で,「収入の増加」が24.7と最下位であった.27項目が50点以上の得点を示した,次に65項目を,個人,家庭,職場,社会生活ストレッサーの4群に分類した.2.職場適応力をみるために私たちが考案した「私の耐えられるストレス度」は73.7で「現在の私のストレス度」は48.8であった.3.ストレス点数の平均値から,各条件別でt検定により比較検討を行い,差異を求めた.その結果は,30歳代では20歳代に比べ,課長と班長は部長より,点数が高かった.同様に,上記の4群間でそれを求めたところ職場生活ストレッサー群のみ差が認められた.同群において,30,40,50歳代は20歳代よりも,課長と班長は一般職に比し,高得点であった.勤続年数では,21年以上の勤務者は,10年以内の者に比較して点数が高かった.以上の結果や調査表の意義と活用を中心に考案を加えた.
著者
石垣 尚男 宮尾 克
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.181-182, 1994-05-20

装置: 左右に動く対象を識別する能力であるDynamic Visual Acuity(DVA・動体視力)の測定装置を新たに開発し,この装置で5才から92才までの826名の動体視力の加齢影響と性差を調べた.新たに開発した装置は,90°の白色円形スクリーン上をランドルト環が左から右に水平に動くものである.被検者とスクリーンの距離は1.2mである.ランドルト環の切れ目の幅は視角40'であり,視力値で0.025に相当する.ランドルト環は初速210°/sで動き,4.8°/sで自動的に減速する.被検者は顎台に顎をのせ,眼球運動のみでランドルト環を追跡し方向を識別する.被検者は切れ目の方向(上下左右)が識別できたら,直ちに方向を応答する.正しい応答の場合,検者はストップボタンを押す.識別できたときの速度がデジタルで表示される.動体視力のパラメータは,識別できた速度である.測定はこれを5回繰り返し,平均値を用いた.結果: 動体視力は男女とも5才から15才の間に急速に発達していた.とくに,5才から10才の間の発達が顕著であった.この測定では動体視力のピークは男女とも15才であった.20才以降,動体視力は加齢とともにほぼ一定比で低下していた.調査したほとんどの年齢で男性の動体視力が優れていたが,有意差があったのは5才児のみであった.生得的に男性は女性より動体視力が優れているのではないかと推測した.この調査により,動体視力は身体の発育期に発達し,成熟後は加齢とともに低下することが明らかとなった.この結果は動体視力(DVA)の加齢影響は静止視力(SVA)のそれとは全く異なるものであることを示した.
著者
岩切 一幸 毛利 一平 外山 みどり 野瀬 かおり 落合 孝則 城内 博 斉藤 進
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.7-14, 2006-01-20
被引用文献数
1 3

フリーアドレス形式オフィスレイアウトでのVDT作業者の姿勢および身体的疲労感: 岩切-幸ほか.独立行政法人産業医学総合研究所-フリーアドレスとは, オフィス内の好きな机に作業者がコンピュータや資料を持って自由に座ることができる新しいオフィスレイアウトである.近年, このレイアウトの導入が増えてきていることから, 従来の固定席形式レイアウトと比較した, フリーアドレス形式レイアウトの実状と作業者の疲労状況を明らかにすることを目的としたアンケート調査を実施した.解析対象者は, システムエンジニア職でノート型コンピュータを使用している20歳から59歳までの男性VDT (Visual Display Terminals)作業者203名とした.そのうち, フリーアドレスの作業者は150名, 固定席の作業者は53名であった.フリーアドレス形式レイアウトは, 固定席形式レイアウトに比べて個人の作業スペースの改善に有効であった.フリーアドレスにおいて危惧されてきた作業者間のコミュニケーションやサポートの不備については, 作業者の不満は認められなかった.しかし, フリーアドレス形式レイアウトでは, 踵が浮いた姿勢で作業している者が多く, 椅子の高さ調節を行っていないと思われた.さらに, このレイアウトは, 首・肩および背中・腰のこり・痛みを増大させる可能性も否定できなかった.このことから, フリーアドレス形式レイアウトは, 何らかの問題を抱えている可能性があり, このレイアウトとVDT作業者の健康について更に研究が必要と考えられた.
著者
川田 智之 新明 ローザ怜美 鈴木 庄亮
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.57-63, 1994-03-20
被引用文献数
2

Breslowの7つの健康に関連する好ましい行動あるいは状態として,喫煙しない・ほどほどの飲酒・定期的運動・適正体重の維持・適度な睡眠時間・朝食の摂取・間食しない,が挙げられ,これら7項目を守ることの重要性は西洋諸国で広く認められ,またそれらに対する保健対策も計画実施されつつある.これらの提言は,米合衆国で行われたコホート調査を基に策定されたものであるが,もともと死亡や疾病発症に対する危険度に関しての結果であるため,予防医学あるいは健康増進の視点から,身体的精神的不具合の主観的愁訴と健康習慣との関連性については十分な検討がなされているとは言えない.著者らは東大式健康調査票(THI)の130項目の質問中に,Breslowの7つの健康習慣が含まれていることを確認し,しかも本調査票が近年広く国内で使用されていることを踏まえて,主観的精神身体愁訴への良い健康習慣の影響を断面調査として実施した.対象は東京都北区の某製造会社の男子工員および事務員とその妻各115人で,夫婦共に回答した各95人(80.5%)を解析対象者とした.夫妻に別居者はなく,居住地は北区,川口市,越谷市等である.自記式健康調査票THIは,心身の主観的健康度を12の尺度とそこから計算される心身症および神経症判別値で数量的に把握できる三択式(はい・ときどき・いいえ)質問紙である.Breslowの健康習慣がTHI質問項目に含まれているので,心身症と神経症の判別値に健康習慣に対する回答結果が影響を与えるため,今回は12尺度について健康習慣との関連性を検討した.調査は1991年3〜4月に実施し,個人結果は自宅に郵送した.なお,統計解析にはMann-Whitney U検定,共分散分析,および林の数量化I類を用いた.また,各健康習慣の有無については,定期性のある場合(はい)を習慣ありとし,それ以外は習慣のない者とした.夫の平均年齢は41.5歳,妻のそれは38.4歳である.Breslowの7つの健康習慣の最頻値は,夫婦共に5個であるが,飲酒と喫煙習慣の違いから,妻の頻度が夫よりも高頻度方向に移動していた.健康習慣の有無で2群に分けた場合,夫では喫煙しないほうが直情怪行性および生活不規則性の両尺度得点が低く,適度な睡眠時間の確保により多愁訴,呼吸器,および口腔肛門の各尺度得点が低く,間食しないほうが多愁訴および直情径行性の両尺度得点が低かった.妻では喫煙しないほうが生活不規則性尺度得点が低く,定期的運動が多愁訴,目と皮膚,および口腔肛門の各尺度得点を下げ,適正体重を維持するほうが呼吸器尺度得点は低く,間食しないほうが呼吸器および口腔肛門の両尺度得点は低下した.7つの健康習慣のうち6つ以上に気をつけているものは3つ以下のものに比べて,夫では多愁訴と直情径行性,妻では呼吸器の各尺度得点が有意に小さかった.林の数量化I類による健康習慣とTHI各尺度得点の関連性では,偏相関係数0.3以上の生活習慣は妻の多愁訴に及ぼす定期的運動のみであり,年齢は夫で虚構性と情緒不安定性両尺度得点に,妻で直情径行性尺度得点に関連が大きかった.断面調査の結果であるため因果関係は確定できないが,健康習慣と自覚的健康との関連性には大きな性差があるものの,上記のような関連性を認めた.
著者
岸 玲子 伊東 一郎 石津 澄子 原渕 泉 三宅 浩次
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.241-250, 1991-07-20
被引用文献数
5

メチルブロマイド(MB)の人体に対する影響についての報告は少なく,特に長期暴露の影響を適当な対照と比較して調べた報告はほとんど見られない.本研究は現場での健康管理やスクリーニングに役立たせる目的でMB作業者の自覚症状についてのケース・コントロール研究を行った.対象は某MB製造工場でMB取扱い歴のある者全員(56名)である.対照は同工場内に暴露歴のない作業者が少なかったため国鉄および関連企業の170名の中から性・年齢(±3歳以内)で1対1にマッチさせ選んだ.自覚症状77項目についてサインテストによりMB群と対照の比較を行った.作業者のMB取扱い歴は6.7±7.4年(Range:1〜25年)であった.MB作業者の平均年齢は40.6±14.0(Range:18〜62年)であった.サインテストによる対比較で有意の差が認められた質問項目別に訴え率をみると,作業中(当日や翌日)に見られた症状では「手がかゆい」,「刺激で鼻がつんつんしたり鼻水が出る」,「手に水疱ができたり赤くはれたりする」の各項目の訴えが多かった.最近(6か月以内)またはそれ以前の症状では「身体がだるい(最近)」,「立ち上がるとフラフラすることがある(以前)」,「食欲がない(以前)」,「いやな夢をよくみる(最近)」,「めまいがしたりぐらぐらする(以前)」,「指先や足裏の感じが鈍い,しびれる(最近・以前)」等の訴え率が高かった.現在MB取扱い者(37名)と過去にMB取扱い歴のあった(19名)を比較すると大きな差は認められず,同様の傾向を示したが,作業中の自覚症状では,「現在MB取扱い者」では前掲の3症状がいずれも対照に比べ有訴者が多かったものの,「過去取扱い者」では「手がかゆい」の項目のみ有意差が見られた.普段の症状では,逆に「現在取扱い者」のほうが有意差のあった項目が少なく,「めまいがしたりぐらぐらする(以前)」のみ有意であった(p<0.02).「過去取扱い者」では「つまずきやすい(最近)」,「いやな夢をよくみる(最近・以前)」,「身体がだるい(最近)」,「指先や足の裏がしびれる(最近・以前)」,「身体の感覚がおかしい(以前)」,「暗いところでは見づらい(最近)」の各項目でMBを以前に使用していた者のほうに強く症状が見られた.ケース群とコントロール群の病名の頻度に大きな差異はなく,年齢も±3歳以内でマッチしているので本調査で認められた自覚症状の出現頻度の差は,基礎疾患による差異や年齢による差とは思われず,MB長期暴露による影響の現われと思われる.現在MB取扱い作業者の尿中Br濃度は18.9±10.4μ9/mlであった.尿中Br濃度と暴露年数の間には関連は見られなかったが,暴露年数と自覚症状の間では有意の関連が認められた.