著者
仙田 満
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.322, pp.108-117, 1982-12-30
被引用文献数
13

本研究は, こどもにとってよいあそび環境とは, という問題へのアプローチとして, 大人の中に刻まれた原風景というものに着眼した。そして時がたっても強烈なイメージとして心に焼きついたあそびの風景=<あそびの原風景>の成立条件を探ることは, こどもにとってよいあそび環境の条件を探ることになるという前提に基づいて研究を進めた。方法としては, 10代後半から50代後半の108人を対象とし, 30分ずつの個別インタビューを行い, あそび場とあそびという2つの観点から分析していき, あそび空間との関係について考察した。その結果1)原風景となっているあそび空間は, 自然スペース, オープンスペース, 道スペース, 建築的スペース, アナーキースペース, アジトスペースの順である。そして, 自然, オープン, 道まで合わせると全体の80%を占める。2)自然スペースが原風景として成立するためには, 単に木や草があればよいのではなく, そこに沢山の生物が生きている事, そして泳ぐ事ができる美しい水である事, 大自然ではなく身近な自然-小川と田んぼ-であり, そこには生物がいる事が推測される。3)道が原風景として成立する場合には, 車が少なく, 道巾がヒューマンで, 電信柱とか道祖神とかがあそびのシンボルになったりする。そして家並の間に小さな路地や, すきまのあるような変化にとんで, しかも一街区をひとまわりできる道空間であることが推測される。あるいは坂道になっていて, ソリや自転車でスリルとスピードが味わえる構造もある。4)アナーキースペースの原風景のイメージでは, 原っぱと廃材の山の両方がある場所である。チャンバラや戦争ごっこなどには, こども達の創造性を刺激し, 彼らの舞台となる。5)アジトスペースは, こども達の身近な生活環境の中に馬小屋, 倉, ポンプ小屋, 廃屋-そういう, スケールが小さく, 非生活空間である事が重要である。6)オープンスペースが原風景として成立するには, そこで行われるあそびによって(A)野球のようなボールゲームは2000m^2以上。(B)鬼ごっこ, チャンバラ等が行われるオープンスペースは600m^2〜2000m^2.(C)縄とび, ままごとは50m^2〜600m^2.というような3段階のスケールをもっており, (B), (C)は, まわりに隠れる事のできる大木, 建物, 家がある空間であることが推測される。

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