- 著者
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國嶋 道子
山下 紀子
梁瀬 度子
- 出版者
- 一般社団法人日本建築学会
- 雑誌
- 日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
- 巻号頁・発行日
- no.323, pp.87-93, 1983-01-30
- 被引用文献数
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8
色彩の視覚的効果を室内色彩設計に応用することによって快適な雰囲気をつくり出すための基礎的研究として, まず壁面の色彩のみによる視覚的効果を定量化することを試みた。結果を要約すれば, およそ以下のとおりである。1)1/10縮尺模型とそのスライドによる実験結果はほとんど差がなく, 本実験はスライド呈示で行った。SD法による評定の再現性には一応の信頼性がある。2)分散分析の結果, 環境温度により評定の差がみられたのは, <暖かみのある-冷ややかな>・<軽い-重い>・<暑苦しい-寒々とした>・<広々とした-狭苦しい>・<生き生きした-活気のない>であり, ほかの評定項目では差は認められなかった。3)因子分析の結果, 第I因子(Activity)として「楽しさ」因子と「快活さ」因子が, 第II因子(Evaluation)として「気持ちの良さ」因子が, 第III因子(Warmness)として「暖かさ」因子が抽出された。4)数量化理論第I類による分析から, Activityには明度が, Evaluationには彩度が, Warmnessには色相が最も強く影響している。高明度ほど楽しく快活に, やや気持ち良く, 冷ややかになり, 彩度が高くなるほど快活さに欠け, 気持ちの良さが低下し, 暖かくなる。各評定項目・因子における色彩の各属性の影響量が明らかになり, 刺激として使用しなかった種々の色彩についてその視覚的効果を予測するうえで有効な資料となりうる。