著者
上野 勝代 國嶋 道子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.270-275, 1978

以上のことより, 下宿学生の住生活 (物的・経済的側面) の実態として以下のことが明らかとなった.<BR>1) 住戸形式としては, 間借とアパート形式が各4割で, アパート形式の中でも学生アパートが昭和30年代後半より増加してきた.<BR>今後, 学生アパートは学生層の住要求に対応した住戸形式として漸次増加していくものと考えられる.<BR>2) 下宿の紹介ルートとしては〈学生部〉〈友人・先輩〉がもっとも多く各12.2%, ついで〈学生向不動産屋〉〈親・親戚〉の各25.2%である.紹介ルートによって住戸形式はかなり異なり, 〈学生部〉〈親・親戚〉は間借が, 〈学生向不動産屋〉は学生アパートが, 〈一般不動産屋〉は一般アパートの割合が高い.<BR>3) 下宿学生の半数は礼金・敷金を支払っている.部屋代は半数が月額6,000~7,000円で, 1万円未満が75%を占め, 一般的に, 〈学生部〉紹介のものは安く, 〈学生向不動産屋〉〈一般不動産屋〉紹介のものは高い.また, 部屋代は, 市場的には合理的な価格形成がなされておらず, 相対的に決められているようである.<BR>4) 居室の広さは4.5畳がもっとも多いが, 収納スペースを含めて6畳あれば満足度も高くなる.<BR>5) 自炊設備のある下宿は69.5%, 浴室のある下宿は30.3%で, 洗濯機は76.1%の人が使用している.<BR>学生の自炊設備, 洗濯機使用の要求は高い.
著者
國嶋 道子 山下 紀子 梁瀬 度子
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.323, pp.87-93, 1983-01-30
被引用文献数
8

色彩の視覚的効果を室内色彩設計に応用することによって快適な雰囲気をつくり出すための基礎的研究として, まず壁面の色彩のみによる視覚的効果を定量化することを試みた。結果を要約すれば, およそ以下のとおりである。1)1/10縮尺模型とそのスライドによる実験結果はほとんど差がなく, 本実験はスライド呈示で行った。SD法による評定の再現性には一応の信頼性がある。2)分散分析の結果, 環境温度により評定の差がみられたのは, <暖かみのある-冷ややかな>・<軽い-重い>・<暑苦しい-寒々とした>・<広々とした-狭苦しい>・<生き生きした-活気のない>であり, ほかの評定項目では差は認められなかった。3)因子分析の結果, 第I因子(Activity)として「楽しさ」因子と「快活さ」因子が, 第II因子(Evaluation)として「気持ちの良さ」因子が, 第III因子(Warmness)として「暖かさ」因子が抽出された。4)数量化理論第I類による分析から, Activityには明度が, Evaluationには彩度が, Warmnessには色相が最も強く影響している。高明度ほど楽しく快活に, やや気持ち良く, 冷ややかになり, 彩度が高くなるほど快活さに欠け, 気持ちの良さが低下し, 暖かくなる。各評定項目・因子における色彩の各属性の影響量が明らかになり, 刺激として使用しなかった種々の色彩についてその視覚的効果を予測するうえで有効な資料となりうる。